「おすわり・まて・ふせ・こい」はじめに犬に教えるしつけとそのメリット

「おすわり・まて・ふせ・こい」はじめに犬に教えるしつけとそのメリット

公開日:/最終更新日:

人間と犬が一緒に生活をしてきた歴史は1万年以上前からであると言われており、近年では犬を大切な家族の一員として迎え入れる家庭が増えてきました。
一方で非常に悲しいことですが、犬を飼う人の増加とともに、犬を捨てる人も増えています。
その理由の一つに挙げられるのが、犬の問題行動。

犬の問題行動は大抵の場合、人間と犬の地位が逆転しており、犬がリーダーシップをとることにより、好き勝手な問題行動を起こします。
犬を可愛がることは非常に大切なことですが、犬を大切な家族として迎え入れ、生涯を共にするパートナーとするのであれば、上下関係をはっきりさせる基礎的なトレーニングは非常に重要です。
今回ご紹介する「おすわり・待て・伏せ・来い」の4つの基礎トレーニングは、飼い主と犬、お互いの幸せな生活のための必須トレーニングであるといえます。

「おすわり」の教え方

「おすわり」の教え方

トレーニング全般に言えることですが、ポイントは短時間でトレーニングを行うことです。
犬の集中力は1回5分~15分程度の短時間で、同じトレーニングを長時間にわたって行っても効果がありません。
長時間のトレーニングは犬にストレスを与えて、覚えられるものも覚えません。
トレーニングは毎日短時間、長期で行うことが大切です。

「おすわり」を教える手順

  • 1.犬が好きなおやつやフードを手に握って、犬の鼻先で匂いだけ嗅がせます。
    小型犬の場合は犬の前に座って行い、大型犬の場合は犬の前に立って、犬の好物の匂いを嗅がせましょう。
  • 2.握っているおやつやフードを、犬の鼻先から後頭部の方向に引き上げて、犬が自然に座る姿勢になるように促します。
  • 3.犬が座ったその瞬間に大げさなほど褒めながらご褒美を与えます。
  • 4.1~3のトレーニングを数回繰り返して、犬が座るようになってから、「おすわり」という言葉(コマンド)を付け足して何度も繰り返します。
    犬は「おすわり」という言葉(コマンド)で「おすわり」すると褒められる、いいことがある、という認識をしはじめるので、覚えるまでは毎日こつこつと短時間ずつ、同じことを繰り返します。
    焦らずに、ゆっくりと覚えさせましょう。

犬に「おすわり」を教えるメリット

「おすわり」を教えることは「犬を落ち着かせる」「飛びつきを防止する」「犬を制御しやすくする」という3つの大きなメリットがあります。
他人に迷惑をかけずに過ごさせることは、犬を飼う上で第一条件にもなりますので、「おすわり」という合図(コマンド)に犬が従うように、日常的にトレーニングをしておきましょう。

また「おすわり」は他の基礎トレーニングや応用トレーニングを行う際に必要となる場合が多いため、基礎トレーニングの一番はじめに覚えさせると良いでしょう。

1.落ち着かせる

犬が興奮しているときや落ち着かないときに有効なトレーニングです。
「おすわり」を教えておくと、犬は必然的に動く動作を一時的にやめて落ち着きます。
ドッグカフェや公共施設などで、犬が人間を長時間待たなくてはいけない場合も「おすわり」ができると、犬は必然的に体を休めることができます

2.飛びつき防止

犬が人やその他の動物に飛びつく様子を見せる際にも、「おすわり」の合図(コマンド)で飛びつきを防止することができます。
大型犬の場合は特に飛びつきは他人に被害を与えるもとになり、トラブルの大きな要因となります。
その他にも飛びつきは身体的な面で犬自身の関節にも負担をかけてしまいます。

3.犬を制御しやすくする

座っている犬は立って動き回っている犬よりも、飼い主さんがコントロールしやすい状態にあります。

「待て」の教え方

「待て」の教え方

ポイントは、犬が動かない状態の時にタイミングよくご褒美を与えて褒めることです。
少しでも犬が動いてしまったら、ご褒美は与えずにはじめの「おすわり」の状態から再度はじめましょう。

動かないで待てばいいことがある、ということをしっかりと犬に認識させます。
はじめは1歩からスタートして、徐々に2歩、3歩と犬から離れます。
「まて」ができるようになってきたら、待たせる時間も少しずつ伸ばしていきましょう。
犬が「まて」できるようになったら、次は指示(コマンド)を教えます。
犬が待っている状態の時に「まて」と犬に言って、動かない状態=「まて」と飼い主が言うとき、ということを認識させます。

「待て」を教える手順

  • 1.犬に「おすわり」をさせて、人間が犬の前に立っておやつやフードを持っていることを教えます。
  • 2.犬の前から1歩後ろに下がり、「おすわり」の状態で、動かずに待てたらご褒美を与えましょう。
    「動かなければご褒美がもらえる」ということを犬に認識させます。
  • 3.犬から離れる歩数を徐々に増やしていきます。
    トレーニングする際は、ロングリードを使用すると犬をコントロールしやすくなります。
    他人がいるような公共の場でトレーニングする際は、必ずリードをつけてトレーニングをしましょう。
  • 4.1~3のトレーニングを数回繰り返して、犬が「待て」をできるようになったら、「待て」という言葉(コマンド)を付け足して何度もトレーニングを繰り返します。
    犬は「待て」という言葉(コマンド)で、待つことによって褒められる、いいことがある、という認識をしはじめるので、覚えるまでは毎日こつこつと短時間ずつ同じことを繰り返します。
    焦らずに、ゆっくりと覚えさせましょう。

犬に「待て」の教えるメリット

「待て」を教えるメリットは、大きく分けて4つのメリットがあります。犬自身が自分の衝動よりも、飼い主の合図(コマンド)を優先させることが重要です。

1.交通事故の防止

犬は、ボールや何かを衝動的に追うことがあります。
そんなときに、「待て」という合図(コマンド)で制御できれば犬は道路に飛び出ることがありません。
愛犬を事故から守るために非常に役に立つトレーニングの1つとなります。

2.落ち着かせる

犬が興奮しているときや、落ち着かないときに有効なコマンドです。
「おすわり」同様に「待て」を教えておくと、犬は必然的に動く動作を一時的にやめて落ち着きます。

3.飛びつき防止

「おすわり」同様に、犬が人やその他の動物に飛びつく様子を見せる際にも「待て」の合図(コマンド)で、犬の行動を制御して、飛びつきを防止することができます。

4.犬を制御しやすくする

停止状態にある犬は、立って動き回っている犬よりも人間がコントロールしやすい状態にあります。
「待て」を教えて、愛犬を制御できる状態にあれば、トラブル防止に非常に役に立つでしょう。

「伏せ」の教え方

「伏せ」の教え方

「伏せ」を教える手順

  • 1.「おすわり」をさせて、ご褒美を持っていることを認識させます。
    おすわりをしたらまっすぐご褒美を持っている手を犬の顔の真下に平行に動かします。
  • 2.犬が自然に「伏せ」をする状態に導きます。
    この時、犬の顔の前にご褒美を持っている手を動かすと犬が一歩前に出てしまうので、「おすわり」の状態で、犬の顎の下のほうへ垂直にご褒美を動かすことがポイントです。
  • 3.1~2のトレーニングを数回繰り返して、愛犬が「伏せ」をできるようになったら、「伏せ」という言葉(コマンド)を付け足して何度もトレーニングを繰り返します。
    犬は「伏せ」という言葉(コマンド)で、伏せをすることによって褒められる、いいことがある、という認識をしはじめるので、覚えるまでは毎日こつこつと短時間ずつ同じことを繰り返します。
    焦らずに、ゆっくりと覚えさせましょう。

犬に「伏せ」を教えるメリット

1.リラックスした状態で愛犬を待たせる

長時間愛犬を待たせる必要があるときや、カフェや公共の場で非常に役に立ちます。
体をリラックスさせることにより、犬は心も穏やかになるので、犬にとってもメリットが大きいトレーニングです。
盲導犬などの、体や神経をよく使う犬は「伏せ」の状態で、いつでもどこにいてもリラックスして休むトレーニングを受けています。

2.落ち着かせる

伏せは、犬が興奮しているときや落ち着かないときにも有効なコマンドです。
「おすわり」同様に、「伏せ」をした状態の犬は、必然的に動く動作を一時的にやめて落ち着きます。
ドッグカフェや公共施設などで犬が人間を長時間待たなくてはいけない場合も「伏せ」ができると、犬は落ち着いた状態で待つことができます。

3.飛びつき防止

犬が人やその他の動物に飛びつく様子を見せる際にも「おすわり」同様に、「伏せ」の合図(コマンド)で、飛びつきを防止することができます。

4.犬を制御しやすくする

停止状態にある犬は、立って動き回っている犬よりも人間がコントロールしやすい状態にあります。
「伏せ」を教えて、愛犬を制御できる状態にあれば、トラブル防止に非常に役に立つでしょう。

「来い」の教え方

「来い」の教え方

「来い」を教える手順

  • 1.愛犬に「おすわり」をさせて、数歩犬から離れます。
  • 2.飼い主さんが離れても、犬が待っている状態を保てることが必須です。
    この時、犬が動いてしまう場合は「待て」のトレーニングから再度行いましょう。
  • 3.愛犬が「待て」の状態で、ご褒美を見せて犬が向かって来るのを待ちます。
  • 4.愛犬が自分のいる場所まで来たら、ご褒美を与えて褒めてあげましょう。
  • 5.愛犬が確実に「待て」の状態から自分のもとに来るようになったら、「来い」の合図(コマンド)で犬を呼び、来たら褒めてご褒美を与えるトレーニングを繰り返します。

犬に「来い」を教えるメリット

1.愛犬を危険から守る

お散歩の最中、または何らかの理由で犬がノーリードで外に出てしまった場合などに、「来い」の合図(コマンド)で犬を車の事故や危険から守ることができます。
迷子の犬を見かけますが、犬はドアが開いていれば大抵は脱走します。
この時に、犬が自分の衝動よりも飼い主の「来い」の合図(コマンド)を優先することができれば、犬は必ず戻ってきます。

2.他犬や他人に迷惑をかけない

ドッグランなどの他犬がいる場所に連れて行く場合は、犬同士が喧嘩してしまう可能性もあります。
犬同士が喧嘩をはじめる兆候が見えた場合は、飼い主の「来い」の合図(コマンド)で、犬同士の喧嘩を避けることができます。

3.飛びつき防止

犬が人やその他の動物に飛びつく様子を見せる際にも、他の基礎トレーニング同様、「来い」の合図(コマンド)で飛びつきを防止することができます。
犬が自分が飛びつきたい衝動よりも、飼い主さんの合図(コマンド)を優先させることが重要です。

基礎トレーニングは愛犬自身を守るためのトレーニングでもある

基礎トレーニングは愛犬自身を守るためのトレーニングでもある

今回は基礎的なトレーニングを4つご紹介しましたが、基礎トレーニングはいずれも第一に犬自身を守り、他人に迷惑をかけずに過ごすための必須トレーニングです。
トレーニングを行うことは、全般的に飼い主さんが犬の上に立ち、リーダー的存在になることを意味します。
問題行動が多い犬のほとんどは、飼い主さんが犬のリーダー的存在になりきれずに、犬が優位に立っている場合が非常に多いといえます。

犬に愛情をかけることも大切ですが、いざという時に、しっかりと犬をコントロールできる状態でないと、愛犬を危険から守ることはできません。
犬社会では、昔から群れで生活する上で、必ずリーダー的存在の犬が、行動に対する大切な指示をだしてきました。
そのため、犬が家庭犬となった現在では、飼い主がしっかりと主導権を握るリーダーとなる必要があります。
家族という群れの中でリーダーが不在の犬は、常に危険を感じて神経を張り巡らせて、不安でいっぱいとなっている場合がほとんどです。

私は、保護犬の愛護活動に参加することも多々ありますが、捨てられてしまう犬の多くは、飼い主に噛みついたり、威嚇したり、吠えてばかりなど様々な問題を抱えていたりします。
こういった犬の多くは、基礎トレーニングがしっかりとできていません。
犬にもともとの問題があるという症例は少なく、飼い主がしっかりとした基礎トレーニングを行わずに、リーダーが不在となってしまった犬がたくさんいるのです。
可愛がってばかりで犬に好き勝手をさせると、結果的に犬の生活の質を精神面で圧迫してしまいます。
犬にとって「しっかりとしたリーダーがいる」ということは、生活する上での安心材料となり、生活の質を高めて、犬自身を守ってくれます。
犬の豊かな生活のためにも、基礎トレーニングでしっかりと信頼関係を築いていきたいですね。