犬と人の歴史|進化のきっかけと人間との関係性について

犬と人の歴史|進化のきっかけと人間との関係性について

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犬と人は古くから共生してきた関係ですが、なぜ共に暮らすようになったのか、その理由をご存じでしょうか?
犬はいつから存在するのか、犬が人と暮らすようになったきっかけはなにか、これまでの歴史を紐解いていきましょう。
今回は、犬の歴史と進化の過程、私たち人間との関係性などについて解説します。

犬の祖先はオオカミ

犬の祖先はオオカミ

犬の祖先がオオカミであることは、一般に広く知られている事実です。
犬の元となるのは、ユーラシア大陸と北アメリカに生息するタイリクオオカミという種のオオカミ。
タイリクオオカミと犬のDNAを調べたところ、その配列や構造はほとんど同じだということが分かっています。

ちなみに、約40万年前から15万年前には、既にオオカミは人と暮らしていたようです。
というのも、その時代のものと思われる旧石器時代の遺跡から、オオカミの骨が見つかっているから。
その後、約1万2000年前から3万5000年前の遺跡では、犬らしき骨が住居跡から発見されています。
はっきりわかっているわけではありませんが、本当にかなり昔からオオカミは犬へと進化していたことが推測されます。

共生はお互いの利害が一致したのがきっかけ

共生はお互いの利害が一致したのがきっかけ

オオカミと人が暮らすようになったきっかけは「1頭の好奇心旺盛なオオカミが人に近づいた」ことです。
当時はまだ、人より野生動物の数のほうが多い時代であり、人は捕食動物に注意して毎日暮らしていました。
ちゃんとした道具もないため狩りの成功率も低く、なかなか人の数を増やすのが難しいような状況だったのです。

そんな時、1頭のオオカミが人の残飯を目的に人の集落に住み着くようになり、人はオオカミの有用性に気づきます。
オオカミは優れた嗅覚と警戒心を持っているため、他の動物が近づいた時にすぐ察知することができますし、優秀なハンターにもなります。
オオカミはオオカミで、人から残飯をもらえれば積極的に狩りをする手間がかからなくなるため、お互いの利害が一致したのですね。

もしこの1頭のオオカミがいなければ、人と犬との関係は今とは全く違っていたかもしれません。
共に暮らすことで、人は安全と狩りの成功率アップを得ることができ、オオカミもより良い環境で暮らすことができたということ。
オオカミと人との共生は、オオカミが持つ「群れで行動する」という気質がうまくマッチした形といえるでしょう。

オオカミから犬に進化した過程

オオカミから犬に進化した過程

オオカミが犬に進化した経緯は、まだはっきり分かっていません
ただ、オオカミと人が共に暮らすうえで、従順で攻撃性が低いというのは重要なポイントです。
オオカミよりも従順で穏やかな「犬」という存在は、人が交配に使う個体を選別し続けたことで生まれたのだと考えられています。

なお、犬という相棒によって狩りの効率が上がったことで、人々の生活は徐々に変わっていきました。
獲物を捕まえる狩猟文明から、作物を育てて収穫する農耕文明へと人間の文化は大きく変化していったのです。
牧畜や農業を営むようになると、土地ごとに人の生活スタイルも変化するため、共に暮らす犬の改良も進められます。
人の生活スタイルが変わったことで、犬も狩猟のパートナーから一転、番犬や牧畜犬としての役割を持つようになったのですね。

進化によって変わったこと

進化によって変わったこと

進化の過程で、犬は様々な特徴を身に付けました。
まず、食事は基本的に人から与えられるため、人の食べ物をより効率よく消化できるように、肉食から雑食に進化
時間をかけて草や穀物をしっかり消化できるよう、犬の腸はオオカミよりも長く進化したのです。

また、オオカミ特有の遠吠えも犬ではほとんど見られません。
オオカミにとって遠吠えは、大切な仲間同士のコミュニケーション手段です。
しかし、犬に進化したことで群れ行動の機会は極端に少なくなり、遠吠えをする必要も無くなっていきました
もちろん犬でも遠吠えをする個体はいますし、シベリアンハスキーやハウンド系の犬など、遠吠えが出やすい犬種も存在します。
ですが、ほとんどの犬種では遠吠えは稀なものになって、その代わりに「吠える」行動が出るようになったのです。

犬のペット化が進んだのは江戸時代以降

犬のペット化が進んだのは江戸時代以降

上記のように、犬は進化の過程で様々な変化を遂げてきました。
その中には、犬自身が必要性を感じて進化した点もありますし、人が都合によって改良した部分もあります。
最近はペットブームということもあり、愛玩を目的とする風貌の改良も日々行われています。

なお、日本の場合、犬がペットとして暮らすようになったのは、奈良時代や平安時代です。
ただ当時は、今のように家族として可愛がるというわけではなく、人を楽しませるサーカスの動物的存在として扱われていたのだとか。
本格的に犬のペット化が進んだのは、動物愛護の先駆け・五代将軍徳川綱吉によって「生類憐みの令」が出された江戸時代以降といわれています。

ちなみに、当時の江戸・浅草には「ちんや」という狆の繁殖業者がいました。
ちんやは大名や豪商相手に狆を販売していて、綱吉はここから100匹もの狆を飼ったというのは、驚きです。
なお、当時のちんやは明治13年に料理屋に転向し、現在はそのまま「ちんや」という名前ですき焼き屋をやっています。

世界中で活躍するワーキングドッグたち

世界中で活躍するワーキングドッグたち

ペットとして飼われることが多くなった犬ですが、今でも人に力を貸してくれる場面はたくさんあります。
例えば、災害が起きたときに活躍する災害救助犬目の不自由な方の生活を助ける盲導犬事件解決に向けて動く警察犬など、その活躍は様々です。
世界では狩猟犬や牧羊犬として活躍している犬も多く存在しており、今でも犬の能力を必要とする場面は多々あるといえるでしょう。

ペット化が進む現代でも、犬たちの遺伝子にはかつての記憶がしっかりと残っています。
難しい仕事を難なくこなすワーキングドッグたちは、私たちがより良く暮らすうえで欠かせない存在です。
お互いが無理のない関係で共生できるよう、私たち人間は犬に感謝をしつつ、犬の祖先がオオカミだと理解して接することが大切です。

犬は私たち人間の最適なパートナー

犬は私たち人間の最適なパートナー

人間の生活において、犬はずっと以前からかけがえのない存在でした。
互いにメリットがあるというシンプルなきっかけで、人とオオカミは共に暮らし、共に進化して人類と犬になったといえます。
今も昔も、人にとって犬は大切な存在であり、生活を共にするパートナーとして最適な相手なのは間違いありません。
今後の研究で犬の歴史や人との関係、その経緯などが明らかになることを期待したいものですね。