アルビノの犬の特徴は?原因や白変種との違い、寿命についても解説

アルビノの犬の特徴は?原因や白変種との違い、寿命についても解説

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白い被毛に、透き通った瞳、色素の薄いピンク色の鼻。
みなさんはこのような犬を見たことがあるでしょうか?
この美しい見た目を持つ彼らは、「アルビノ犬」と呼ばれる非常に珍しい犬種(正確には犬種群)です。
しかし、白い被毛に覆われた犬のすべてが、アルビノというわけではありません
今回はそんなアルビノ犬の特徴や、アルビノ犬として生まれてくる原因、寿命などについて解説します。

アルビノ犬の特徴

アルビノ犬の特徴

まずはじめに、アルビノという言葉は、動物学において「メラニンの生合成に関わる遺伝情報の欠損により、先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患がある個体」と定義されています。

例えば、人間のほくろは「メラニン」という物質が皮膚の一部に集まり、黒や茶色などの「斑」を形成したものですが、アルビノの場合、このメラニンを生まれつき生成できません。
つまり、体内で色素を作る遺伝子を持っていない(または非常に少ない)ということです。
そのため、アルビノ犬の被毛や皮膚は白く、通常であれば黒い部分の「肉球」や「鼻」が、ピンク色になっています。

また、目も同様に色素が薄く、網膜自体が非常に薄い構造をしています。
他の動物では、毛細血管の色が見えることで「赤目」と呼ばれる真っ赤な瞳を持つ個体が多いアルビノですが、犬の場合は非常に明るいブルー系の瞳や、ピンクの瞳が多いです。
この目は先天的に見えていなかったり、目の大きさ自体が小さくなる傾向にあります。

さらに、アルビノは目だけでなく、耳に対しても先天的な疾患を持つケースが多く、聞こえづらかったり全く聞こえないといったこともあるでしょう。

その他にも、メラニンには紫外線から皮膚を守るという重要な役割がありますが、メラニンを体内で生成しづらいアルビノ犬は、紫外線を含む陽の光により、通常よりも皮膚炎や皮膚がんのリスクが高まります。

非常に美しい容姿を持つアルビノですが、これらの特異な体質により、一般的な飼育初心者が飼うには極めて難しいでしょう。

アルビノ犬として生まれてくる原因

アルビノ犬として生まれてくる原因

非常に稀ですが、アルビノ犬は突然変異や、劣性遺伝によって生まれてくるといわれています。
遺伝的に生まれやすい犬種としては、ダックスフンドやダルメシアン、ドーベルマンなどが挙げられます。

犬の統計については、はっきりと分かっていませんが、人間の場合アルビノとして生まれてくる確率は1〜2万人に1人とされています。
しかし、アルビノの原因となる遺伝子を持つ人は50〜70人に1人と、そこまで少ないわけではありません。

アルビノ犬に関して言うと、その白く美しい容姿から、人間による故意の繁殖が行われ、取引されるケースも珍しくありません。
突然変異や自然な遺伝であれば、確率の問題であり、仕方がないことです。
しかし、人間の都合でわざとこうした犬種群を繁殖することは、問題があるのではないでしょうか。
商業目的でいたずらに命を弄ぶ、こうしたブリーダーからは決して購入しないようにしましょう。

体毛が白い動物は全てがアルビノ種?

体毛が白い動物は全てがアルビノ種?

体毛の色が、アルビノと同じく白くなっている「白変種(はくへんしゅ)」という個体が存在します。
代表的な白変種としては、ホワイトライオンやホワイトタイガー、ホッキョクグマ、ハクチョウなど。
彼らの体毛が白くなっている原因は、周りの環境に合わせた進化の過程といわれています。

かつて地球が氷河期だった時代、一面が氷や雪におおわれた世界において、保護色となる白は生存していくうえで非常に有利でした。
現在でも、白変種の動物たちの体の中には体毛を白化する遺伝子が残っていて、それらが受け継がれています。

しかし、アルビノと白変種では決定的な違いがあります。
それは、白変種は体内でメラニン色素を生成できるということ。

アルビノの動物が、目や鼻が黒くないのに比べて、白変種の動物は目や鼻や肉球などにしっかりとした色素が入っています。
体毛が白い動物を見て「あれはアルビノだよ」と決めつけるのではなく、彼らの目や鼻、足の裏などを見てみましょう。
ひと目見て違いがわかると思います。

また、視覚や聴覚も正常に働いていて、生活になんら支障がないのも白変種の特徴です。
つまり白変種は通常個体に比べて体毛が白いだけで、アルビノとは全く違った体質だということですね。

アルビノ犬の寿命は?

アルビノ犬の寿命は?

こうした特異な体質を持つアルビノ犬ですが、必ずしも寿命が短いというわけではありません
これは犬に限らず、アルビノという体質を持つ人間を含む他の動物でも同様です。

確かにメラニン色素を体内で生成できないということは、紫外線に弱くなり、皮膚ガンなどのリスクは通常よりも高まります。
しかし、現在では犬用の日焼け対策グッズも増え、目にはサングラスをするなど、紫外線の対策は以前より容易に出来るようになりました。
定期的な健康診断はもちろん、散歩は昼間ではなく夜間に行う屋外ではなく室内で遊ばせるなどの工夫も施すことで、通常と同じように暮らすことは出来るでしょう。

一方で、自然界ではそうもいきません。
氷河期の時代のように白銀の世界ではない現在では、白の個体は非常に目立ってしまいます。
通常の個体に比べ、他の動物に捕食されやすく、命の危険にさらされることが多いのも事実です。
また、悲しい現実ですが、希少種がゆえ悪意のある人間の手により、乱獲されてしまうこともあります。

ただでさえ自然界では、視覚や聴覚は生きて行くために非常に重要な役割を果たす器官です。
それらが弱いと言うことは、すなわち死に直面するという状況が増えるということ。
そういった意味ではアルビノ種は、寿命が短いともいえるでしょう。

ただ、アルビノ犬に関していえば、前述の通りしっかりと対策を施してあげることで、平均的な寿命を全うし、他の犬たちと同じように元気に過ごすことも可能です。

アルビノ犬の幸せは、飼い主さん次第

アルビノ犬の幸せは、飼い主さん次第

白い被毛に、透き通った瞳の美しく珍しい外見を持つアルビノ犬。
その希少性から、古来では「神」として崇められていた時代もあるそうです。

しかし、現代では悪質なブリーダーにより、商業目的で繁殖され、高値で取引がされたり、不要になれば殺処分されるなど、許されるべきではない被害に晒されることも多くあります。

けれど、「アルビノ」という体質であること自体は、決して不幸な運命を背負っているわけではありません

自分が飼っている犬からアルビノの子が生まれた、ということも可能性としてあるでしょう。
しかし、飼い主さんがアルビノの体質をしっかりと理解し、対策を施してあげれば他の犬同様、元気に長生きしてくれます。
少し、手間や気遣いが増えてしまうこともあるかもしれませんが、それはどの犬種でも同じこと
もしアルビノの犬を飼うことになったら、十分なケアを施し、大切に育ててあげてくださいね。

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