マンゴーワームに要注意!犬だけでなく人間にとっても危険な寄生虫とは?
マンゴーワームという寄生虫をご存知でしょうか?
「ハエの幼虫」であるマンゴーワームは、犬をはじめ、哺乳類全般にとって非常に危険な存在です。
この記事では、マンゴーワームの生息地や寄生方法、寄生された時の症状や対処法、予防を解説します。
目次
マンゴーワームはウマバエの幼虫
マンゴーワームとは、ヒツジバエ科「ウマバエ」の幼虫です。
体長15~20mmほどで、フルーツのマンゴーに形が似ていることから、その名前が付きました。
マンゴーワームの主な生息地は、南アフリカや中央アメリカ、東南アジアやアフリカなど、暖かい地域です。
日本国内での生息は確認されていませんが、まれにこれらの国から輸入された動物園の動物から見つかることもあります。
また、渡航でマンゴーワームに生息地を訪れた際、寄生された例もあり、海外へ行き来する際は注意が必要です。
マンゴーワームは主に馬に寄生する
マンゴーワームの成長形であるウマバエは、その名の通り、主に馬へ寄生する性質を持っています。
ウマバエには馬に対する宿主特異性があるため、幼虫が発育するためには馬に寄生しなければいけません。
そのため、ウマバエは馬の前肢の被毛やたてがみに産卵し、馬の体温を利用して孵化、毛づくろいの際に馬の口内へ侵入します。
口内へ侵入したウマバエは馬の歯肉に約1か月間寄生し、その後は翌春~初夏まで胃の中で成熟、最終的には便に混ざって排出されます。
排出された成熟幼虫はさなぎになり、その夏、成虫化したウマバエが新たな馬の被毛に卵を産み付けるのですね。
このように、ウマバエの繁殖サイクルには、馬の存在が不可欠です。
そのため、基本的には馬が寄生先として狙われるものの、ときには犬や人間が対象になることもあります。
ウマバエは犬や人の体内で成熟できない生物ですが、寄生自体は哺乳類であれば可能なのです。
蚊やダニ、別のハエなどを介して卵を産み付けることも
ウマバエの卵は、蚊やダニ、別のハエなどの中間宿主を介して産み付けられることもあります。
卵は動物の体温によって孵化し、マンゴーワームとして傷口や鼻の穴などを通じて体内に侵入し、寄生します。
なお、馬では口腔を介して寄生するマンゴーワームですが、ほかの動物では傷口から侵入するケースが多いです。
床ずれや交通事故などによる大きな傷はもちろん、小さな切り傷であっても、マンゴーワームにとっては格好の侵入経路になりえます。
ただし、ウマバエは傷のない皮膚をかじって破り、皮下に侵入することもできるため、傷がないからといって安心はできません。
マンゴーワームに寄生された時の症状
マンゴーワームが寄生した際の症状は、馬とほかの動物で異なります。
馬の場合、マンゴーワームは馬の胃粘膜にかみついて寄生するため、胃腸障害が多くみられます。
胃痛・潰瘍による食欲の低下や元気消失、重症のケースでは胃破裂や胃穿孔を起こし、命を落とすこともあるでしょう。
対して犬やほかの動物では、蝿蛆症(ようそしょう)を引き起こします。
蝿蛆症は、ハエの幼虫が寄生することによって発症する感染症で、ハエウジ症とも呼ばれています。
蝿蛆症の場合、マンゴーワームは皮下に寄生しているため、皮膚の激しいかゆみ、痛み、発熱などの症状がメインです。
マンゴーワームに食い破られた皮膚は常に激しく痛み、不眠や食欲不振、鳴き声をあげるなども様子もみられます。
マンゴーワームの駆除は動物病院で行う
寄生したマンゴーワームを取り除くには、必ず動物病院で処置を受ける必要があります。
仮に犬が寄生された場合は、医療用のピンセットを用いて皮下のマンゴーワームを外科的に摘出します。
また、馬では駆虫薬や幼虫の発育遅延薬を飲ませ、マンゴーワームによる症状を取り除きます。
なお、マンゴーワームの表面には返しの役割を持つ黒いとげがあり、つまみだそうとしても簡単に取ることはできません。
そのため、動物病院ではとげが皮膚にひっかからないよう、傷口を大きく切開してから摘出することもあるでしょう。
マンゴーワームをすべて取り除いたら、傷口を洗浄・縫合し、清潔なガーゼで傷口を覆います。
寄生虫の予防には衛生的な環境の維持が重要
マンゴーワームをはじめ、すべての寄生虫感染で重要なのは「衛生的な環境を維持する」ことです。
ハエは残飯や虫・動物の死骸などに寄ってくるため、犬の食べ残しはけっして放置せず、すぐに片づけましょう。
敷地内では、蚊の発生源となる水たまりを作らないようにし、ダニが潜んでいる可能性のある雑草を刈り取ることも重要です。
どうしても蚊やハエが発生してしまう場合は、犬の安全に十分配慮しつつ、周囲に殺虫剤を散布すると良いでしょう。
また、ハエは排泄物で汚れた毛や、じゅくじゅくした傷口を好んで寄ってきます。
寝たきりで床ずれがあったり、おなかの調子が悪く肛門周りが汚れている犬などは、ハエにとって都合がよいといえます。
蝿蛆症を起こさないためには、愛犬の体を常にきれいにし、衛生的な環境をキープしておくことが大切です。
正しい知識を持ってマンゴーワームの感染を防ごう
主に馬に寄生するマンゴーワームですが、なかには犬や人などに寄生するケースもあります。
現在のところ、日本国内での生息は確認されていませんが、海外から持ち込まれる可能性は十分あるため、注意しなければいけません。
マンゴーワームをはじめ、ハエやハエの幼虫は不衛生な環境を好むため、普段から清潔な環境を整えておきましょう。
もし愛犬が感染してしまった場合は、すみやかに動物病院へ連絡し、適切な処置を受けてくださいね。