愛犬の「噛まずに食べる」丸飲み癖には要注意!犬の消化能力と対処法
愛犬の食事風景をみて、「全然噛んでないけど大丈夫?」と思った経験はありませんか?
人間は子どもの頃「食事はよく噛んで食べる」と教わりますが、犬にとって早食い・丸呑みは普通のこと。
飲み込むように食事をしても問題ない消化機能を持っているため、よく噛む必要はありません。
とはいえ、なんでもかんでも丸呑みしてしまう愛犬の場合には、消化不良や誤えん(気管に食べ物が入ること)に注意!
食事と一緒に大量の空気も飲み込んでしまうと、胃が過剰に膨らんで胃捻転を起こすことがあります。
今回は、食べ物の消化に関わる消化液についての知識や丸呑み癖への対処法をご紹介します。
目次
消化の流れと消化液の種類について
犬が食べ物を消化する流れは「口→食道→胃→十二指腸→小腸→大腸」と、人間とまったく同じ。
ポイントごとに分泌される消化液はそれぞれ異なりますが、このうちもっとも強いのは胃の消化液です。
以下は各臓器で分泌される消化液のうち代表的なものであり、それぞれの消化対象を表しています。
【代表的な消化液の種類と分泌臓器】
唾液 | アミラーゼ(炭水化物の消化を促す) |
胃液 | ペプシン(タンパク質の分解を促す)、リパーゼ(脂肪の消化を促す) |
膵液 | アミラーゼ(炭水化物の消化)、膵リパーゼ(脂肪の消化)、トリプシン(炭水化物の消化) |
胆汁 | 胆汁酸(乳化作用を持つ。他の消化液のような消化酵素はない) |
腸液 | マルターゼ、スクラーゼ、ラクターゼ(3つとも炭水化物の消化)、ジペプターゼ(脂肪の消化) |
胃液の強さは「トイレ洗剤とクエン酸の間くらい」
私たち人間や犬をはじめ、基本的な動物の胃液はpH1.0~2.5程度といわれています。
pHとは液体の性質をはかる単位のことで、胃液はちょうどトイレ洗剤とクエン酸の間くらいの数値。
酸性度が非常に高く、胃に入ってきた細菌などを除去したり、腐敗や発酵を防ぐ役割があります。
なお、胃の粘膜はアルカリ性の粘液で保護されているため、胃液によって荒れてしまう心配はありません。
「犬の消化液は強力」これ、実は間違いです!
犬の胃で分泌される消化液はタンパク質を分解する作用が強く、肉の消化能力に優れています。
よく「犬の消化液は強力」や「犬は胃液の酸性度が強い」などといわれますが、これは厳密にいうと間違い。
正しくは「人間に比べて犬は胃液の量が多いため、肉などのタンパク質をより早く消化できる」のです。
また、丸呑みした食べ物が喉につまらないよう、犬の口内では唾液もたくさん分泌されます。
そのため、人間なら到底飲み込めないようなサイズの食べ物も、平気で丸呑みができるのですね。
※なお、飲み込みが上手くいかず犬がえづいている時には、そのまま嘔吐させてあげたほうが安全です。
飲み込ませようと喉元や背中をさすってしまうと、犬の気が散って飲み込むことも吐き出すこともできなくなります。
ちなみに人間の場合、摂取した食べ物が体外へ排出するまでには平均40時間ほどかかります。
対して犬では平均8~10時間ほどですから、なんと約4倍も早いスピードで消化されるわけなんです。
私たち人間とは異なる消化能力を持つ犬にとって、早食いや丸呑みは特別なことではありません。
犬は胃酸過多による嘔吐が多い
犬はもともと胃酸の分泌量が多いため、空腹時に嘔吐をしやすい動物。
消化するものが何もない状態で胃液が多く分泌されれば、どうしても胃粘膜へ負担がかかります。
特に留守番で空腹時間が長かったり、食事と食事の間隔が広い場合には注意しましょう。
吐いた液が黄色い場合は胆汁、透明な液体や白い泡が混じっている場合は胃液である可能性が高いです。
もし愛犬がよく嘔吐をする場合には、極端な空腹時がないか、生活を見直してあげてくださいね。
胃酸過多が続くと胃潰瘍で食欲不振を起こしたり、血を吐いたりする可能性もあります。
丸呑み癖は犬の本能によるもの
なお、犬がほとんど食べ物を噛まない理由には、野生動物の習性が関係しています。
野生動物にとって食事の時間というのは非常に無防備であり、睡眠中の次に危険なタイミング。
外敵に狙われるリスクを少なくし、かつ自分の取り分を確保するには、早く食事をしなければいけません。
つまり、犬にとって食べ物を丸呑みすることは、生き抜くために必要な知恵・食べ方というわけです。
愛犬がフードやおやつを噛まないからといって異常なわけではないので、安心してくださいね。
とはいえ、大きなものを与える時は注意して
ある程度のサイズであれば丸呑みOKな犬たちですが、あまり大きなものは与えないこと。
骨の形をしたガムやジャーキーなどは唾液で溶けにくいため、喉に詰まってしまうリスクがあります。
なお、もし喉を通過できても胃で十分に消化できなければ、最悪は腸閉塞を起こす可能性も…。
犬用ガムが原因の窒息事故も少なくありませんし、与える場合には必ず目を離さないようにしましょう。
片側を飼い主さんが固定して与えることができれば、より安全におやつを楽しむことができますよ。
また、子犬やシニア犬、お腹が弱い愛犬には、できるだけ胃腸に負担をかけない工夫が必要です。
食べ物の消化ではとても多くのエネルギーを消費しますし、少なからず胃腸に負担がかかりますからね。
消化不良による軟便や嘔吐を防ぐため、フードやおやつはなるべく小さいサイズを選んでください。
なお、食後2時間は激しい運動を避けるなど、胃捻転の予防も忘れないようにしましょう。
丸呑みによる窒息や誤えんには注意して生活しよう
今回は、犬の丸呑み癖への対処法や消化液の種類・作用についてご説明しました。
犬にとって食べ物を丸呑みするのは普通のことですが、場合によっては危険が伴う可能性もあります。
もし愛犬がなんでも丸呑みしようとする場合には、できるだけサイズの小さいものを与えること。
ぬるま湯でフードをふやかしたり、一気食い防止の食器を使うだけでも、丸呑みによる窒息や誤えんは防げます。
犬は基本的に丸呑みをする動物だ、ということを頭に置き、充分な安全対策を行っておきましょう。