クッシング症候群ってどんな病気?原因・症状・好発犬種・治療法について
クッシング症候群は、正式名称を「副腎皮質機能亢進症」というホルモン疾患のひとつです。
症状の程度は犬によって変わりますが、重症の場合は血栓症を起こしたり、命に関わることもあるため注意が必要です。
この記事では、犬のクッシング症候群の原因と症状、なりやすい犬種や治療・予防法を解説します。
目次
【原因】副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されて発症する
副腎とは、腎臓の隣にある2つの臓器のことです。
副腎は数種類のホルモン分泌に関わる臓器であり、副腎皮質では副腎皮質ホルモンが分泌されています。
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は、副腎皮質で分泌されるホルモンである「コルチゾール」の過剰分泌によって発症します。
コルチゾールが過剰に分泌される原因には、主に3つの要因が挙げられます。
- 副腎腫瘍
- 脳下垂体腫瘍
- 内服薬の副作用
このうちもっとも多いのは、脳下垂体の腫瘍化による副腎皮質機能亢進症です。
副腎皮質機能亢進症の犬の85%は、脳下垂体が腫瘍化することで発症するといわれています。
脳下垂体の腫瘍化は5歳以上の犬に多くみられ、性別的にはオスよりもメスに多い傾向があります。
【症状】左右対称の脱毛と腹部の膨らみが代表的
クッシング症候群の症状は、以下の通りです。
副腎皮質機能亢進症の症状
- 尿が増える
- お腹が膨らむ
- 飲水量が増える
- 食欲が異常に増える
- 毛が薄くなる・抜ける
- 皮膚感染症が治りにくい
- 筋力の低下(動きが鈍くなる)
- 皮膚が黒っぽくなる(色素沈着)
- 皮膚が薄くなる(血管が透けてみえる)
- 深い眠り(嗜眠:強い刺激を与えなければ目を覚まさない)
クッシング症候群の代表的な症状は、左右対称の脱毛と腹部膨満です。
皮膚トラブルが起こりやすくなるため、皮膚の黒ずみやフケなどの症状がみられることもあるでしょう。
ほとんどの場合、脱毛は頭部と尾を除いた全身にみられますが、皮膚の痒みはありません。
その他、クッシング症候群の原因によっても症状は異なります。
例えば脳下垂体の腫瘍化による副腎皮質機能亢進症では、認知症のような症状が出ることがあります。
同じ方向にクルクル回り続けたり、視力障害が出たりするケースもあるでしょう。
対して副腎の腫瘍化による副腎皮質機能亢進症では、高血圧や血栓症のリスクがあります。
体内で出血したものが固まり、血管に詰まることで塞栓症を起こして突然死することもあるため、要注意。
急激なストレスによって体調が急変する恐れがあり、治療は慎重に進めていく必要があります。
クッシング症候群になりやすい犬種は?
下垂体の腫瘍化による副腎皮質機能亢進症を発症しやすいのは、以下の犬種です。
- プードル
- ビーグル
- ダックスフンド
- ボストン・テリア
なお、副腎の腫瘍化による副腎皮質亢進症は、シーズーに多くみられます。
6~10歳くらいの中高齢犬の発症率が高く、どちらかというとメスのリスクが高い傾向があります。
副腎皮質機能亢進症は、高齢の犬に多く発症する可能性があるため、年に1~2回の定期的な健康診断が大切です。
【治療】ホルモン抑制剤の投与を一生涯続ける
薬の副作用による副腎皮質機能亢進症では、徐々に薬の量を減らしていきます。
原因になる薬はコルチゾールと似た働きを持つステロイド剤などが主ですが、いきなりの休薬は危険です。
急激に薬を減らすことで逆に副腎皮質ホルモンが過剰に減ってしまい、副腎皮質機能低下症(アジソン病)を引き起こす恐れがあります。
服用している薬を減らす際は、徐々に量を減らしていきリバウンド症状が出ないように調整することが大切です。
脳下垂体・副腎の腫瘍化による副腎皮質機能亢進症では、主に内科的治療を行います。
内科的治療の具体的な方法は、ホルモン抑制剤を服用し、コルチゾールの過剰分泌を抑えるというもの。
ただし、下垂体が腫大している場合は、内科的治療によって更に腫大する恐れがあるため、別の方法を選択します。
下垂体が腫大している犬では、放射線治療を行うのが一般的です。
下垂体腫瘍が巨大化すると、神経症状が現れることがあるため、放射線で腫大を抑えます。
放射線治療ができる動物病院は限られているため、治療は大学病院など設備の整ったところで行うことになるでしょう。
腫瘍による副腎皮質機能亢進症は、外科手術による腫瘍切除で改善が見込める場合もあります。
ただし、下垂体腫瘍の切除はリスクが非常に高いため、手術は主に副腎腫瘍の切除の際に推奨されます。
副腎皮質機能亢進症では、血管がもろくなっていて大出血の恐れがあり、傷口が治りにくいことも懸念されます。
外科手術は、麻酔リスクや出血リスクなど、様々なリスクを考慮し、慎重に検討する必要があります。
【予防】明確な予防法はない
残念ながら、クッシング症候群には明確な予防法はありません。
脳下垂体・副腎の腫瘍化はすべての犬に起こる可能性がありますし、薬の副作用も同様です。
日頃からよく愛犬の様子を観察しておき、いつもと違う様子がみられたら早めに動物病院で検査を受けること。
クッシング症候群は突然命を落とす可能性もある病気なので、早期発見・早期治療を心がけましょう。
愛犬がクッシング症候群になってしまったら
愛犬がクッシング症候群を発症した場合、基本的には内服薬で治療します。
はじめは毎日の内服が必要であり、定期的な身体検査や血液検査を行い、薬の量を調節していくのです。
治療の成果がみられ始めれば1週間に1~2回程度の内服で状態をコントロールできるようになり、症状も改善します。
目安としては内服後2ヶ月ほどで発毛が始まるため、焦らず長い目で改善を目指しましょう。
糖尿病や膵炎、皮膚病などの合併症にも注意が必要です。
糖尿病や膵炎は悪化すると命に関わることもあるため、日々の体調管理が重要です。
クッシング症候群の犬は食欲が異常に増えるため、欲しがるだけ与えていては、他の病気を引き起こしかねません。
愛犬が欲しがったとしても、おやつやご飯をあげる量はしっかり管理し、太らせないようにしてくださいね。
また、被毛が薄くなると外部からの刺激で皮膚炎を起こしやすいため、散歩時は洋服を着せると良いかも。
草むらや茂みにはダニやノミなどの外部寄生虫が潜んでおり、皮膚病のリスクが高いため、散歩コースは選ぶこと。
過度に気にする必要はありませんが、できる限り愛犬の生活環境を清潔に保つ心掛けも大切です。
気になる様子があればすぐに動物病院で診てもらおう
クッシング症候群は、一見すると大した病気に感じられないかもしれません。
しかし、実際は様々な合併症を引き起こしたり、場合によっては命に関わることもある深刻な病気です。
もし愛犬がよく水を飲むようになったり、毛が左右対称に薄くなってきたりしたら、すぐに動物病院に相談するようにしてください。
クッシング症候群の症状を上手にコントロールできるよう、早期発見・早期治療に努めましょう。