偽クッシング症候群(アロペシアX)ってどんな病気?原因や症状、治療法について
偽クッシング症候群とは、ホルモン疾患であるクッシング症候群によく似た症状がみられる病気のことです。
この病気はポメラニアンの発症率が高いため「ポメラニアン脱毛症」とも呼ばれており、痒みを伴わない左右対称性の脱毛が特徴です。
今回は、そんな偽クッシング症候群の原因や症状、なりやすい犬種や治療法・なってしまった時のケアについて解説します。
目次
偽クッシング症候群の症状とは
偽クッシング症候群になると、まずはアンダーコート(硬く太い毛)が徐々に抜け始めます。
始めはなんとなく毛がパサついて縮れっぽくなり、徐々に左右対称に体毛が抜けて、皮下が薄く透けてみえてくるようになるでしょう。
頭と足、尾の先以外の体の毛はほとんど抜け、毛ヅヤの低下、皮膚の乾燥・色素沈着による黒ずみなどがみられます。
痒みはほとんど・あるいはまったくないため、犬自身は気にせずに生活することができますし、命にかかわる病気ではありません。
偽クッシング症候群はあくまで見た目上に問題が出るだけで、クッシング症候群や甲状腺機能低下症など、よく似た病気に比べて苦痛はないのです。
ただし、脱毛によって皮膚バリアが低下すると膿皮症などの皮膚疾患を併発する可能性があるため、注意が必要です。
偽クッシング症候群の原因
今のところ原因は不明ですが、ホルモン異常や遺伝などが関係しているのではないかといわれています。
広く考えられているのは、ホルモン疾患であるクッシング症候群と症状が似ていることから、同じく内分泌ホルモンの異常が一因という考えです。
環境や食事などが発症の引き金となることはないといわれていますが、明確な原因や詳細については現在も解明中です。
この病気には「去勢反応性皮膚疾患」や「成長ホルモン反応性皮膚症」、「アロぺシアX・脱毛症X」など、20種類ほどの名称があります。
もっともポピュラーなのは、原因不明な謎=Xとアロぺシア=脱毛症を合わせた「アロぺシアX」で、その名の通り解明されていない謎が多い病気です。
偽クッシング症候群は、血液検査や画像検査上はなにも問題がないため、検査によって診断はつかず、他の病気が除外された際に疑われます。
偽クッシング症候群になりやすい犬種
偽クッシング症候群は、ポメラニアンをはじめ、シベリアン・ハスキーやサモエドなど、主に北欧系の犬種に発症しやすいとされています。
偽クッシング症候群の好発犬種
- ポメラニアン
- シベリアン・ハスキー
- アラスカン・マラミュート
- サモエド
- チャウチャウ
- トイ・プードル
- パピヨン
- シェットランド・シープドッグ
特にポメラニアンの発症率は圧倒的に高く、偽クッシング症候群の犬の半数以上がポメラニアンといわれるほどです。
なお、偽クッシング症候群の多くは1~4歳頃の若年期に発症し、なかでもオスの発生率が高いといわれていますが、原因は分かっていません。
偽クッシング症候群の治療法
偽クッシング症候群は原因不明の病気であり、有効な治療法や予防法が分かっていません。
そのため、ホルモン剤やステロイド剤の投与や発毛効果のあるサプリメント服用、薬用シャンプーでの薬浴など、様々な方法で改善を目指します。
なかでも、成長ホルモンの一種「松果体ホルモン」を投与する方法は副作用が少なく、50%以上の犬に発毛効果がみられるとして注目されている治療法です。
なお、去勢手術を行うことで症状が改善したケースもありますが、必ずしも改善するわけではなく、再発する場合もあるため、注意しましょう。
また、治療効果が出るまでの期間には個体差があり、治療には気長に取り組む必要があります。
途中で治療を止めてしまうと、せっかく治まっていた症状が再度現れる可能性があるため、治療は根気強く取り組みましょう。
愛犬が偽クッシング症候群になってしまったら
もしも愛犬が偽クッシング症候群になってしまったら、皮膚の乾燥や色素沈着を少しでも防ぐため、加湿器を使って湿度を適切に保ちましょう。
洋服を着るだけでも皮膚の刺激は少なくなるので、散歩に行く時だけではなく、室内でも洋服を着用させてあげてください。
乾燥がひどい冬場には保湿ジェルやクリームなどを使って皮膚を保湿することで、皮膚バリアが正常に保たれます。
また、偽クッシング症候群の改善には、ストレスを溜めない環境作りも大切です。
スキンケアに特化したフードや適度な運動、十分な睡眠を意識して、愛犬の免疫力を維持できるように工夫しましょう。
適度なブラッシングはマッサージ効果もあり、育毛・発毛を促す効果が期待できるので、愛犬とのコミュニケーションとしておすすめです。
なお、偽クッシング症候群の犬は皮膚が薄くなっているので、ラバーブラシなど柔らかいタイプのブラシを使ってくださいね。
普段から愛犬の皮膚・被毛の様子をチェックしておこう
偽クッシング症候群は原因不明の病気ですが、早期発見・早期治療はとても大切です。
症状が軽いうちに治療ができれば、そのぶん症状の進行を抑えられ、完治するまでの時間も短く済むかもしれません。
普段から愛犬の皮膚・被毛の様子はよくチェックして、気になることがあれば獣医さんへ相談しましょう。