犬の聴覚は人の4倍も?聞き取り可能な周波数や特徴について
犬は、人間には聞こえない周波数や小さな音を敏感にキャッチすることができます。
私たちの生活には様々な音が溢れていますが、これらは犬にとってどのように聞こえているのでしょうか?
犬の聴覚について考えることで、愛犬が普段聞いている世界を覗くことができるかもしれません。
目次
犬の聴力は人間の約4倍以上ある
まず初めに、犬の聴力は犬種にかかわらず「人間の約4倍以上はある」といわれています。
そもそも「音」というのは、周波数による空気の揺らぎのことをいい、生き物によって感知できる範囲が違います。
感知できる周波数の範囲は可聴域と呼ばれており、生き物の聴力を測る基準となる値のこと。
つまり、この可聴域の幅が広ければ広いほど、聴力が優れているといえるのですね。
では、他の動物と比べて犬の可聴域にはどのような違いがあるのでしょうか?
人間 | 20Hz~2万Hz |
犬 | 65Hz~5万Hz |
猫 | 60Hz~10万Hz |
馬 | 55Hz~3万3500Hz |
コウモリ | 1000Hz~12万Hz |
イルカ | 150Hz~15万Hz |
こうしてみると、犬は高音域の聞き取りには特に優れていることが分かりますね。
低音域の聞き取りはわたしたちとそれほど違いがありませんが、高周波の感知は圧倒的な高さです。
犬の訓練で使用される犬笛は、こうした犬の可聴域を上手に利用したものといえるでしょう。
ちなみに、犬が消防車やパトカーのサイレンに呼応して鳴くのは、野生の本能によるものです。
サイレンの高い周波数は犬の遠吠えとよく似ているため、他の犬の呼びかけと勘違いしてしまうのですね。
わたしたちにとっては何ら特別でない音ですが、犬には仲間からのサインとして聞こえているのです。
音源の特定能力はなんと人間の8倍以上!
「こっちにおいで」などと話しかけると、愛犬が首をかしげるような仕草をすることがあります。
これは左右の耳の位置を変えることによって音源の位置を正確に探り、言葉の内容を聞き取ろうとしているから。
つまり、犬は首をかしげて音の聞こえをよくすることで、文字通り「言葉に耳を傾けてくれる」のです。
こうした音源特定能力は頭のサイズが大きいほど高いため、大型犬ほど優れている傾向があるといえます。
聴力自体には関係しない「頭の大きさ」ですが、音源特定能力の面では差が出てくるのですね。
なお、犬の耳には「耳の位置を変えるために必要な筋肉」が複数付いています。
例えば、耳を前に向ける時に使う頬骨耳介筋や、耳を下に引く時に使う耳下腺耳介筋など。
こうした細かな筋肉がしっかりと付いていることで、犬は様々な方向に耳を動かすことができるというわけです。
ちなみに、耳の構造や形状にとって犬の聴力が大きく変わることはありません。
犬の耳の形状には大きく分けて「立耳」と「たれ耳」の2つがあるものの、いずれも聴力に差はないようです。
たれ耳のほうが音をシャットダウンしてしまうイメージがありますが、実際は特に影響がないのですね。
「か・さ・た」など、子音の聞き取りは苦手
わたしたちの言葉は母音と子音の2つで構成されています。
このうち犬は子音の聞き取りが苦手で、母音との聞き分けはあまりできないようです。
母音とは、日本語でいう「あ・い・う・え・お」のことで、それ以外の「か・さ・た」などは全て子音と呼ばれます。
もともと犬は猫ほど言葉の聞き取りが得意ではなく、比較的よく聞き取れるのは母音がほとんど。
例えば「さんぽ」は「あんお」、「ごはん」は「おあん」、「おやつ」は「おあう」などに聞こえるということです。
子音の聞き取りが苦手なので、長い文章やよく似た言葉の聞き分けも苦手です。
「そっちに行っちゃだめだよ、こっちに戻っておいで」など、長い文章は何を言っているか分かりづらいのです。
そのため、犬をしつける際には「だめ!」「もどれ!」なお、できるだけ簡潔なコマンドを使うのがおすすめ。
興奮している時は特に聞き取りが困難になるので、普段から短い音節の言葉で話しかけてあげましょうね。
犬は高い音が好きって本当?
あなたは、「女性のほうが犬に好かれやすい」という話を聞いたことがありませんか?
犬は低い声よりも高い声が好きなので、女性が好きといわれていますが、この情報は正確ではありません。
というのも、犬が高い声を好む傾向にあるのは「飼い主さんの声がいつもより高いのは褒められる時だから」です。
つまり、犬は「高い声=褒められた」という過去の記憶を覚えていて、高い声に良いイメージを持っているのです。
対して低い声というのは、犬にとって「叱られている」という負のイメージがつきやすいもの。
低い声のほうが好きな犬もいますが、多くの場合は高い声のほうが安心しやすい傾向があるでしょう。
犬にとって言葉は、飼い主さんからの重要なシグナル
言葉を持たない犬にとって、飼い主さんからの声掛けはなかなか理解ができません。
にもかかわらず首をかしげて一生懸命聞き取ろうとしてくれる姿を見ると、なんだかとてもいじらしいですよね。
愛犬に話しかける時は、できるだけ聞き取りやすいように「単純で短い言葉」を意識してあげてください。
なお、聴覚が優れているぶん大きな音は怖がるので、落ち着いた声で話しかけるようにしましょう。
あなたと、あなたの愛犬の生活がもっと豊かなものになりますように!