バベシア症ってどんな病気?原因と症状、治療・予防法について
バベシア症とは、バベシア原虫が赤血球に寄生することで起こる病気です。
バベシア原虫は主に暖かい地域に生息する寄生虫で、日本では西日本に多く存在しています。
今回は、そんなバベシア症の原因と症状、治療法や予防法について解説します。
目次
【原因】バベシア症の原因はマダニの吸血
バベシア症は、マダニの媒介によってバベシア原虫が体内に入ることで感染します。
体内に侵入したバベシア原虫はマダニの唾液を介して犬の赤血球に寄生し、次々と分裂・増殖をします。
すると、体内の免疫反応によって赤血球が破壊され、ひどい貧血や高熱を引き起こすのです。
なお、すべてのマダニがバベシア原虫を持っているわけではありません。
日本の場合、西日本の山野に生息するマダニは、バベシア原虫を持っていることが多い傾向があります。
南は沖縄まで確認されていますが、近年では地球温暖化の影響で東日本にも感染が広がっています。
【症状】バベシア症に感染すると重い貧血や高熱がみられる
バベシア症の症状は、重い貧血症状や40℃を超える発熱、元気や食欲の低下などがあります。
ひどい貧血を起こすため、口内や目の結膜、舌の色が白っぽくなり、肝臓や腎臓の機能障害を起こすこともあるでしょう。
また、体内の赤血球が破壊されることで尿の色が濃い茶色になったり、血尿がみられるケースも多いです。
バベシア症の症状
- 貧血
- 黄疸
- 発熱
- 身体を動かさなくなる
- 口内や眼球の結膜が白っぽい
- 尿が茶色に近い色になる
- 食欲・元気がない
なお、初期のバベシア症は症状が分かりづらく、感染を見落としやすいといわれています。
飼い主が気付かないうちに感染し、重篤な症状が現れて初めて分かることも多いので、普段からよく様子をみておくこと。
特に、子犬やシニア犬など免疫力が低い犬では、治療が遅れると命に関わることもあるため、注意が必要です。
バベシア症は人や他の犬にもうつる?
犬に感染したバベシア症が人にうつることはありません。
感染した犬の血に触れても人間に感染する可能性はないので、安心してください。
バベシア症に感染していても、普段通りに接してあげて大丈夫です。
ただし、犬同士の場合はバベシア症の感染リスクがあるため、多頭飼育の場合は要注意。
犬同士のケンカで傷口から感染したり、母犬から子犬への母子感染してしまうケースは既に確認されています。
また、感染犬の血を吸ったマダニが別の犬を吸血すると、バベシア症に感染することも分かっています。
【治療】バベシア症の有効な治療法は見つかっていない
残念ながら、現在の獣医療ではバベシア症の有効な治療法はありません。
現状、犬の体内に入ったバベシア原虫を完全に取り除く方法はなく、完治は難しい病気といえるでしょう。
したがって、バベシア症の治療は、抗菌剤や抗生剤でバベシアの増殖を抑える方法をとります。
貧血がひどい場合は輸血などを行い、症状を緩和させて犬の体力を回復させつつ寛解状態を目指すのが一般的です。
なお、寛解とは一時的に病状が治まった状態のことをいい、この状態を「無症状キャリア」と呼びます。
【予防】バベシア症の予防は「とにかくマダニに刺されない」こと
バベシア症を予防するには、なによりもマダニに刺されないことが大切です。
ちなみに、犬にマダニがついてからバベシア原虫に感染するまでは、約36~48時間かかるといわれています。
山や草原に出かける際はマダニ駆除薬を投与し、帰宅後は念入りに犬の体をチェックしましょう。
もし吸血中のマダニが付着していた場合は、そのまま触らずに動物病院へ連れていくこと。
安易に引っ張るとマダニの口部分が犬の体内に残ってしまい、かえって除去が難しくなるので、注意しましょう。
吸着したマダニは、薬剤を使い、専用のピンセットで取り除く必要があることを覚えておいてくださいね。
バベシア症に感染した後はストレスの少ない生活を心がけて
愛犬がバベシア症に感染してしまったら、できるだけストレスのない生活を心がけましょう。
バベシア症の場合、急激な体調悪化が治まったとしても、何らかのタイミングで再度症状が出るケースがあります。
例えば、過度なストレスや免疫抑制剤の投与、大きな病気の治療中などは、再発のリスクが高まります。
再発のリスクを少しでも下げるためには、日頃からストレスのない環境で犬を生活させることが大切です。
栄養バランスの整った食事や適度な運動、良質な睡眠やこまめなスキンシップなど、できることから始めましょう。
犬にとって飼い主とのコミュニケーションはストレス発散のいい機会なので、たくさん触れ合ってくださいね。
異変を感じたらすぐに動物病院へ連れていこう
バベシア症を避けるには、とにかくマダニと接触しないようにすること。
もし発症してしまった場合は、動物病院で適切な治療を受け、早急な寛解状態を目指しましょう。
バベシア症は一度発症すると、生涯にわたって付き合っていかなくてはいけない病気です。
愛犬の様子がおかしいと感じたら、できるだけ早く動物病院で診察を受けるようにしてくださいね。