ナルコレプシーってどんな病気?原因や症状、好発犬種や治療・予防法について
犬のナルコレプシーとは、慢性の睡眠障害のことです。
人の睡眠障害としては比較的知っている人が多いナルコレプシーですが、実は犬も発症します。
今回は、犬のナルコレプシーの原因や症状、好発犬種や治療法について解説します。
目次
【原因】神経ペプチドの異常によって発症する
犬のナルコレプシーは、ヒポクレチンという神経ペプチドの異常によって起こります。
神経ペプチドとは、興奮の伝達や抑制に作用する脳内物質のことで、人にも存在するものです。
ヒポクレチンは覚醒コントロールにおいて重要な役割を持っており、異常が生じると睡眠障害を引き起こします。
ナルコレプシーには、先天性と後天性の2種類があります
先天性のナルコレプシーは、染色体上のヒポクレチン受容体遺伝子の変化が原因で発症します。
対して後天性のものは、ヒポクレチンの産生システムそのものに何らかのトラブルが起こることで引き起こされます。
後天性のナルコレプシーの原因としては、脳炎や外傷、腫瘍などがあります。
これは脳幹の睡眠中枢に障害が生じることで発症し、高齢の犬ほど発症リスクが高いといわれています。
なお、後天性のナルコレプシーは先天性よりもやや症状が重くなる傾向があります。
【症状】全身の筋肉が弛緩した後しばらくすると眠りに落ちる
犬のナルコレプシーの症状は、全身または膝や腰などの筋肉が弛緩してしまうというものです。
この現象はカタプレキシー発作と呼ばれており、発作を起こした犬は首がだらりと下がって動かなくなります。
発作に抵抗しようとした場合、一時的に千鳥足のような歩き方になりますが、最終的には横になります。
カタプレキシー発作中は意識が保たれており、犬は目を開けたまま横になります。
発作は1~2分ほど続き、その後は眠りに落ちますが、眠っている間も筋肉の細かい痙攣や手足の動きがみられます。
犬の場合、食事や遊びなどポジティブな興奮がきっかけで発作を起こすことが多いでしょう。
ちなみに、犬のナルコレプシーはてんかんと間違われることが多い病気です。
確かに同じ脳神経系の病気ではありますが、ナルコレプシーとてんかんの原因や症状は別物。
ナルコレプシーでは、てんかん発作時のよだれや粗相などはみられず、脳波や心電図の表示も全く異なります。
ナルコレプシーになりやすい犬種は?
ナルコレプシーを起こしやすい犬種は、以下の通りです。
- ラブラドール・レトリーバー
- ドーベルマン
- プードル
- ミニチュア・ダックスフンド
- ビーグル
なお、犬のナルコレプシーの発症率に性別は関係ありません。
しかし、オスよりもメスのほうが重症化しやすい傾向があるといわれています。
先天性のナルコレプシーの発症時期は、早くて生後4週齢、遅くとも生後6ヵ月頃です。
対して後天性は脳炎や腫瘍などの発症が大きく関わっているため、何歳であっても発症する可能性があります。
【治療】中枢神経に作用する薬を投与する
犬のナルコレプシーの治療では、主に対症療法的な薬物投与が行われます。
ナルコレプシーの根本的な医療法はまだ見つかっていないため、中枢神経に作用する薬の投与がメインです。
代表的な治療薬としては、三環系抗うつ剤やアドレナリンα2受容体拮抗薬などがあります。
犬のナルコレプシーは命に関わる病気ではありません。
しかし、一度発症すると生涯にわたって症状が続くため、適切な薬物治療が必要です。
少しでも発作の回数を減らすことができるよう、薬は獣医師の指示通り、用法・容量を守って使用しましょう。
【予防】ナルコレプシーの明確な予防法はない
残念ながら、犬のナルコレプシーの明確な予防法はありません。
先天性の場合は遺伝子の異常があることで発症するため、生まれた後に予防することは困難です。
ブリーダーやショップから犬を迎える際は、血縁にナルコレプシーの疑いがある犬がいないか確認しておきましょう。
後天性のナルコレプシーの場合、怪我や感染症などの病気がきっかけで発症します。
少しでも発症のリスクを減らすためには、日頃から健康的な生活を心がけ、免疫力を高めておくことが大切です。
バランスの取れた食事・適度な運動・良質な睡眠を日常的に意識し、愛犬の免疫力をあげておきましょう。
ナルコレプシーになってしまったら
犬がナルコレプシーと診断されたら、投薬治療とは別に生活環境の見直しが必要です。
いつカタプレキシー発作が起こっても犬が怪我をしないように、床には柔らかいマットを敷きましょう。
横になった際に頭をぶつける危険性があるため、家具の角にはクッション材を取り付けておくのがおすすめです。
また、外出時はあまり自宅から離れないようにすることも大切です。
慣れない場所は興奮のもとになりますし、外出中に発作が起きると落ち着くまで動けなくなります。
大型犬の場合は抱えて連れて帰るにも大変な苦労があるため、できるだけ遠出を避けたほうが良いといえます。
ナルコレプシー発症後は、プール遊びなども控えたほうが良いでしょう。
万が一水中でカタプレキシー発作が起こってしまうと溺れる可能性があり、とても危険です。
どうしても水遊びをさせたい時は、犬から目を離さないようにし、何か異変があればすぐに引き上げましょう。
何か異変があればすぐに病院へ
犬のナルコレプシーはあまり知られていない病気であり、てんかんと間違われることも多いです。
初めてカタプレキシー発作を目撃した時は、どうしたら良いのか分からずパニックになってしまうかもしれません。
もし愛犬に疑わしい症状がみられた時は、すぐにかかりつけの動物病院へ連絡して指示を仰ぎましょう。