皮膚組織球種ってどんな病気?原因や症状、好発犬種や治療・予防法について

皮膚組織球種ってどんな病気?原因や症状、好発犬種や治療・予防法について

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皮膚組織球種とは、比較的よくある犬の皮膚腫瘍です。
独特な見た目で、成長スピードがとても早いので、早い段階で見つかりやすいのが特徴的。
今回は、皮膚組織球種の原因と症状、好発犬種や治療法などについて解説します。

【原因】はっきりした原因は分かっていない

【原因】はっきりした原因は分かっていない

皮膚組織球種の原因は、まだ分かっていません。
ウイルス感染が原因という説もありますが、原因物質が発見されているわけではないのが現状。
悪性腫瘍によく似た見た目ではあるものの、実際は良性の腫瘍です。

なお、腫瘍として増殖している細胞は「表皮ランゲルハンス細胞」と呼ばれています。
この細胞は表皮一面に突起を張り巡らせて、外敵が侵入していないか常に見張りをしているもの。
病原体やウイルスなどを発見すると活性化し、リンパ節に移動して免疫細胞を活性化させ、外敵を排除します。
皮膚組織球種は、この表皮ランゲルハンス細胞が何らかの理由で増殖することで形成されています。

【症状】1~2cm程度の丸い腫瘍ができる

【症状】1~2cm程度の丸い腫瘍ができる

皮膚組織球種は、頭部や耳介、四肢の皮膚に現れます。
色は濃いピンクで表面はなめらか。
丸くドーム状に膨らんでおり、脱毛や潰瘍がみられることもあります
痛みはないので、犬が患部を気にして舐めたりすることは滅多にありません。

皮膚組織球種はある日突然発生し、急速に成長します。
通常は直径1~2cm程度の大きさまで成長しますが、なかには4cm近くなるものも。
腫瘍としてはかなり成長が早いですが、多くは自然に小さくなるので心配しなくても大丈夫ですよ。

皮膚組織球種になりやすい犬種は?

皮膚組織球種になりやすい犬種は?

皮膚組織球種になりやすいのは、以下の犬種です。

  • ボクサー
  • ダックスフンド
  • コッカースパニエル
  • グレート・デーン
  • シェットランド・シープドッグ
  • ブル・テリア

皮膚組織球種は若い犬に多くみられ、老犬では少ない傾向があります。
実際、発症例の50%は2歳以下の犬であり、純血種の犬に多くみられるといわれています。
なお、純血種のうち特に発症率が高いのは、オスのボクサーとダックフンドです。

皮膚組織球種をはじめ、多くの病気は雑種よりも純血種で発症しやすいとされています。
純血種の犬は同じ品種同士で繁殖を行うため、偶然変異した遺伝子が固定されやすいという特徴があります。
もちろん雑種でも遺伝性疾患を発症することはありますが、発症率という点では圧倒的に純血種のほうが高いでしょう。
純血種の犬をお迎えする場合は、事前に犬種特有の遺伝性疾患について調べておくことをおすすめします。

【治療法】犬が気にしていなければ様子をみる

【治療法】犬が気にしていなければ様子をみる

ほとんどの皮膚組織球種は、自然に退縮します。
数週間から数か月で消えることが多いため、投薬や外科的治療が行われることは基本的にありません。
ただし、あまりにもサイズが大きかったり、表面が破れて傷になっていたりする場合は、切除手術が行われることもあるでしょう。
足先などにできてしまい、犬が舐めたりかじったりして細菌感染を起こす恐れがある場合も、切除切除を行います。

皮膚組織球種の場合、切除手術後や自然消失後は、再発しないことがほとんどです。
ただ、まれに切除したところや別のところに新しい腫瘍が発生することもあるため、経過観察は必要です。
なお、再発時も初回同様、放っておけばしばらく経つと自然に消えることが多く、犬が気にしていなければ治療は必要ありません
膨らんでいるからといって消炎作用のあるステロイドを塗ると、かえって小さくなるのが遅くなるため、注意しましょう。

【予防】発症自体を予防することはできない

【予防】発症自体を予防することはできない

皮膚組織球種は発症原因が分かっていない腫瘍であり、予防法も不明です。
発症自体を予防することは難しいため、発症後の速やかな対処に重点を置きましょう。
皮膚組織球種だと思っていたら悪性腫瘍だったという可能性も考慮し、発見後は早めに動物病院へかかってください。
普段から犬の体を触っておき、しこりを発見した場合は早めに腫瘍検査を受けることをおすすめします。

なお、皮膚組織球種の診断は「針生検による細胞診」が一般的です。
これは、腫瘍部に針を刺して組織を採取し、顕微鏡で皮膚組織球種の特徴である「類円形細胞」がないか探すというもの。
犬によっては針生検が難しい場合もありますが、その場合は直接ガラススライドを腫瘍に付けて細胞を採取します。

皮膚組織球種になってしまったら

皮膚組織球種になってしまったら

皮膚組織球種を発症したら、しばらくは何もせず様子をみましょう。
通常、皮膚組織球種は3ヵ月ほどで自然に小さくなり、無くなることが多い病気です。
下手に気にして触ったりすると犬が違和感を持つ原因になりますし、赤みが出てしまうこともあります。
気になる気持ちはよく分かりますが、診断後は極力気にしないようにし、普段と同じ生活を心がけてくださいね。

なお、手足にできた皮膚組織球種は犬が気にして舐めることもあります。
頭部にできたことで色々なところにこすれ、感染を起こす可能性もあるため、常に清潔を維持するように。
泥んこ遊びや草むら探索などは念のため避けて、腫瘍部に刺激を与えないようにしましょう。

良性の腫瘍なので経過は良好。様子をみよう

良性の腫瘍なので経過は良好。様子をみよう

皮膚組織球種は良性の腫瘍であり、経過は良好です。
サイズが大きいので悪いものではないかと心配になりますが、比較的ポピュラーな腫瘍なので大丈夫ですよ。
もし犬が気にしていたり、大きすぎて日常生活に支障をきたしたりする場合は、かかりつけの動物病院で相談しましょう。
獣医師の判断で切除手術を勧められる場合もあるため、犬の健康状態含めて検討してくださいね。