角膜内皮ジストロフィーってどんな病気?原因や症状、好発犬種や治療・予防法について
犬の角膜内皮ジストロフィーとは、角膜が白く混濁する眼疾患です。
中年齢で発症することが多い病気で、症状がひどい場合は外科手術が必要になることもあります。
今回は、犬の角膜内皮ジストロフィーの原因や症状、好発犬種や治療法などを解説します。
診断された後に注意すべきことも解説しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
【原因】角膜内皮細胞や内皮細胞数の障害によって発症する
犬の角膜内皮ジストロフィーは、角膜内皮細胞に障害が起きることで発症します。
眼球内にある内皮細胞自体、あるいは内皮細胞の数に異常が起きることで、角膜内皮は徐々に変性。
内皮の浸透圧調整機構(ポンプ機能)が低下し、角膜内に水分が溜まってしまいます。
角膜内皮に障害が起きる原因は、まだ分かっていません。
ただし、好発犬種が存在することから遺伝的要因があると考えられています。
ちなみに、角膜内皮ジストロフィーとよく似た名前の病気に「角膜ジストロフィー」があります。
この病気はコレステロールや中性脂肪などが何らかの原因で付着し発症するもので、基本は両目に現れます。
角膜内皮ジストロフィーのように角膜潰瘍を生じることはなく、進行しても痛みや炎症はありません。
角膜ジストロフィーの好発犬種
- シベリアン・ハスキー
- シェットランド・シープドッグ
- ミニチュア・ダックスフンド
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- ビーグル
【症状】数か月から数年かけて白濁の範囲が広がる
角膜内皮ジストロフィーの症状は、片目あるいは両目の白濁です。
初めは片目であっても最終的には両目が白濁し、範囲は数か月から数年かけて全体に広がっていきます。
白濁が全体に広がるまで視力に影響が出ることはなく、痛みや炎症もありません。
ただし、角膜内皮ジストロフィーが進行すると、角膜潰瘍を併発することがあります。
これは角膜内に水分が溜まりすぎて発生した水膨れが破裂して起きる病気で、強い痛みを伴います。
眼球がゆがんでしまう恐れもあるため、角膜潰瘍を併発した場合は早急な対処が必要です。
角膜内皮ジストロフィーになりやすい犬種は?
角膜内皮ジストロフィーを起こしやすい犬種は、以下の通りです。
- チワワ
- ミニチュア・ダックスフンド
- ボストン・テリア
角膜内皮ジストロフィーは、何歳の犬でもなりうる病気です。
ただ、若い犬にくらべると中高齢期以降の発症率が高めであり、5~13歳で発症することが多いでしょう。
【治療】点眼薬や軟膏がメイン。症状がひどい場合は外科手術を行うことも
角膜内皮ジストロフィーの治療は、主に点眼薬や軟膏を使って行います。
角膜内にたまった余分な水分をくみ出すため、抗浸透圧性の外用薬を使用して症状の改善を目指します。
また、角膜内皮ジストロフィーの犬が併発しやすいブドウ膜炎を抑える目的で、消炎剤が処方されることもあります。
なお、角膜潰瘍がみられる場合は、レーザーで角膜を形成するなどの外科手術を行うこともあります。
レーザー角膜形成術は新たな角膜ができるのを防ぐことができ、痛みや炎症の悪化を抑えることにつながります。
症状や合併症がひどく犬の苦痛が大きい場合には、外科手術によって眼球を摘出するケースもあります。
ちなみに、上記のような治療では角膜内皮自体を修復することはできません。
障害を受けた角膜内皮が元通りになることはなく、完治は困難です。
根治を目指すのであれば角膜の移植手術が必要ですが、高度な医療機器と専門的な技術は必要不可欠です。
眼疾患の手術ができる動物病院は限られているため、まずはかかりつけの獣医師に今後の治療方針を相談しましょう。
【予防】角膜内皮ジストロフィーの明確な予防法はない
多くの遺伝性疾患にいえることですが、犬の角膜内皮ジストロフィーには明確な予防法がありません。
そのため、どんなに健康な生活を送っていても、ある日急に眼が白く濁って見えるということは多々あります。
角膜内皮ジストロフィーの場合、早期発見・早期治療で症状の進行をできる限り抑えることは可能といわれています。
日頃から愛犬と密にスキンシップを取っておき、ちょっとした変化にも早めに気づけるようにしておきましょう。
角膜内皮ジストロフィーになってしまったら
愛犬が角膜内皮ジストロフィーと診断された後も、基本的にはこれまで通りの生活で大丈夫です。
初期であれば視力に影響が出ることはないため、処方された点眼や軟膏で症状の改善を目指しましょう。
白濁の状態は毎日こまめにチェックするようにし、気になることがあれば獣医師に相談してください。
白濁が広がって視力に影響が出てきた場合も、過度に心配する必要はありません。
愛犬がぶつかって怪我をすることがないように、室内にある邪魔なもの・危険なものは片付けておきましょう。
視力が落ちると暗い場所で移動するのを嫌がるようになるため、散歩は明るいうちに行ってくださいね。
また、視力が低下した犬は音に敏感になり、これまでよりも少し神経質になる傾向があります。
外出する時は人通り・車通りの多いコースは避け、できるだけ静かな道を選んで歩かせてあげましょう。
角膜内皮ジストフィーは早期発見・早期治療が大切
犬の角膜内皮ジストロフィーは、まだ解明されていないことが多い眼疾患です。
ただ、角膜潰瘍ができなければ痛みや炎症もなく、点眼や軟膏などで症状の進行を抑えることは可能です。
もし愛犬に気になる様子がみられたら、動物病院でできるだけ早く眼の検査を受けてくださいね。