パブロフの犬の意味って知ってる?古典的条件付けや仕組みについて

パブロフの犬の意味って知ってる?古典的条件付けや仕組みについて

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「パブロフの犬」という言葉をご存じでしょうか?
なんとなく映画やマンガで聞いたことがある、という方は多いと思います。
皆さんの思うパブロフの犬の大まかな意味合いとしては、「何かに対して無意識のうちに条件反射してしまうこと」だと思いますが、その意味や仕組みまで理解している人はなかなかいないでしょう。
ここでは、なぜ無意識に条件反射してしまうことをパブロフの犬と表現するようになったのか、どうして条件反射が起こってしまうかの仕組みを、分かりやすく説明していきます。

そもそも「パブロフの犬」のパブロフってなに?

そもそも「パブロフの犬」のパブロフってなに?

まずはじめに、パブロフという言葉は、ロシアの生理学者であるイワン・パブロフ(1849~1936年)からとられたものです。
当時、パブロフ博士は研究室に実験用の犬を何頭か飼っていました。
その犬たちは、博士がエサを持って研究室に入ってくるたびに、よだれを垂らしました。
犬を飼っている人であれば、これは理解できますよね。
ご飯を我慢できずに思わず体が反応してしまったのでしょう。

ところが、博士が研究室に入る時、エサを持っていなくてもその犬はよだれを垂らしたそうです。
博士はよだれを垂らす犬たちを見てこう考えました。
「私が部屋に入ってくることと、エサがもらえるということを関連付けて、体が反応したのではないか?」。
犬は何かと何かを関連づけて学習していくという考えは今では浸透していますが、当時は分からなかったのでしょう。
そしてパブロフ博士は、この反応を証明するための実験を始めました。
この実験に使われた犬たちのことを「パブロフの犬」と呼ぶようになったのです。

パブロフ博士の実験とはどんなものだった?

パブロフ博士の実験とはどんなものだった?

パブロフ博士はまず犬の頬に、唾液の分泌量を測るための管を通しました。
そして犬にエサを与えているときにベルを鳴らし続けることを繰り返しました(ベルではなくメトロノームだったという説もあります)。

犬はごはんを与えられている時、当然ながら唾液の分泌量は増えています。
しかし実験を繰り返すうちに、ベルの音を聞いただけで唾液の分泌量が増えるようになりました。
きっと犬は「ベルの音=ごはん」と学習したのでしょうね。

この学習によって身に付く反応のことを、条件反射と呼びます(現在では条件反応と呼ばれる場合もあります)。
パブロフ博士はこの実験結果を元にした論文によって、1904年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

条件反射と無条件反射の違い

条件反射と無条件反射の違い

普段、犬がごはんを食べているときは、口の中に唾液が分泌されています。
これは別に学習によってもたらされた反応ではなく、自然な現象ですね。

私たち人間に置き換えてみると、例えばボールがこちらに飛んできてぶつかりそうになった時、無意識のうちに自分の腕で頭を守ったり、針が手に刺さりそうになったら、サッとその手を引っ込めますよね。
これらの反応は、もともと生まれ持って備わっている機能(先天的な機能)であり、「無条件反射」と呼ばれています。
分かりやすく説明すると、無条件反射とは「学習せずとも自然と体が反応すること」です。
そう考えると、パブロフ博士が実験によって導き出した「学習によって反応するようになる」条件反射とはだいぶ違ったものですよね。

人間でも条件反射ってあるの?

人間でも条件反射ってあるの?

学習によって備わる条件反射は、私たち人間でも見られます。
例えばお化け屋敷に入るとき、まだ何も怖いものを見ていないのに心臓がドキドキしたりしますよね。
梅干をまだ食べていないのに、口の中に唾液が出てきたりもします。

これらはまさに学習によって身につけられた条件反射であり、これまで経験してきたことを、自然と体が学習していて反応しているのでしょう。
会社で怖い上司が自分の名前を呼んだだけで、体がビクッとしてしまうのも、きっと条件反射なのでしょう。
みなさんも心当たりがある人はいるのではないでしょうか?

犬に学習させること「古典的条件付け(レスポンデント条件付け)」について

犬に学習させること「古典的条件付け(レスポンデント条件付け)」について

パブロフ博士は、犬にごはんを与えている時にベルを鳴らし続けるという実験をしました。
そして犬に「ベルの音=ごはん」という条件反射を学習させました。

この学習させること自体には呼び名があり、「古典的条件付け(レスポンデント付け)」といいます。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、さきほどのパブロフ博士の実験の話をすこし深掘りして説明していきます。

まだ犬が条件反射を学習する前に、パブロフ博士が犬に聞かせていたベルの音のことを、「中性刺激」といいます。
ベルの音だけでは犬にとって何の意味もなさず、ただの音でしかありません。
しかし何となく犬は音に対して反応はします。
この「中性刺激」に反応することを「定位反応」といいます。
犬は何か音が聞こえたら、そちらを気にしたりしますよね。
犬の飼い主さんならばよく見る光景だと思います。
そして犬に与えていたごはんを「無条件刺激」とよびます。

犬にとっては何の意味も持たない中性刺激(ベルの音)でも、無条件刺激(ごはん)と合わせて学習させることによって、そのうち中性刺激(ベルの音)のみで体が反応するようになってしまいます。

まとめると、犬に学習させることを古典的条件付け・レスポンデント条件付けといい、それによって引き起こされる反応を条件反射とよびます。

ちょっと難しい話になってしまいましたね。
しかしこうした反応にはしっかりとした学術的な定義づけがあるということです。

古典的条件付け(レスポンデント条件付け)を理解して、愛犬のしつけに活かそう

古典的条件付け(レスポンデント条件付け)を理解して、愛犬のしつけに活かそう

いかがでしたでしょうか?
なんとなく「パブロフの犬」と聞いたことがある人でも、その意味合いや仕組みについて理解していただけたのではないでしょうか。
私たち人間でもかわいいワンちゃんたちでも、同じように何かを経験し、それを記憶して体で覚えます
そしてそれらの記憶から、無条件で体が反応してしまうことも同じです。

近年では定説となっている「犬のしつけは褒めて伸ばす」というのもこの古典的条件付けが活用されています。
犬に何か不快なことを経験させて、それを記憶させてしまっては、きっと嫌な反応ばかりしてしまう子に育ってしまうことでしょう。
飼い主さんとしては、犬に対して出来る限り良い経験をさせて、こちらが見ていてうれしくなるような反応をしてくれる子に育てたいですね!

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