スイスアルプスの4犬種。「スイスマウンテンドッグ」の違いや共通点

スイスアルプスの4犬種。「スイスマウンテンドッグ」の違いや共通点

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日本でも一定の人気を誇る大型犬、バーニーズマウンテンドッグ。
バーニーズの愛称でも知られる、スイス原産の山岳犬です。
実はこのバーニーズマウンテンドッグには、3種類の似た犬種が存在するのをご存知でしょうか?
今回は、そんなバーニーズをはじめとする「スイスマウンテンドッグ」4犬種の共通点や違い、特徴などについて解説していきます。

スイスマウンテンドッグとは?

スイスマウンテンドッグとは?

スイスマウンテンドッグは、その名の通りスイスのアルプスを原産とする、山岳犬として活躍してきた歴史を持つ犬種群です。
具体的には、以下の4つの犬種がスイスマウンテンドッグと呼ばれます。

  • グレータースイスマウンテンドッグ
  • バーニーズマウンテンドッグ
  • アペンツェラーキャトルドッグ
  • エントレブッハーキャトルドッグ

これらの犬種は、元々スイスの公用語でもあるドイツ語で「Sennenhund – ゼネンフント(山犬の意)」と呼ばれていましたが、後にマウンテンドッグと英訳されました。
スイスマウンテンドッグに属する4犬種は、荷車引きをしたり、牛を誘導するといった作業が得意な犬として、現在でも広く愛されている犬種です。

スイスマウンテンドッグ4犬種の共通点

スイスマウンテンドッグ4犬種の共通点

スイスマウンテンドッグの4犬種には、3つの共通点があります。

  • 同じルーツを持っている
  • ワーキングドッグとしての能力が高い
  • 「トライカラー」の毛色

ここでは、それぞれの共通点について解説します。

同じルーツを持っている

スイスマウンテンドッグの4犬種は、歴史を辿ると同じルーツを持っていると考えられています。
つまり「親戚」と言っても良い関係性なんですね。

現在から2100年ほど前、ローマ帝国は「マスティフ種」と呼ばれる大型犬を引き連れ、スイスへと進軍しました。
その歴史の流れで、スイスに「輸入」される形となったマスティフ種は、地域の土着犬たちと交配し、4つの犬種に分かれていきます。

ゼネンフント4犬種の中で最も大きな体格をしているのは、「グレートスイスマウンテンドッグ」です。
グレートスイスは、バーニーズやアペンツェラーの祖先とも考えられています。

4犬種の中で唯一の長毛種であるバーニーズマウンテンドッグは、かつて「デュールベッヘラー」と呼ばれていました。
デュールベッヘラーの名称は、この犬種が多く生活していたベルン州の旅館が由来といわれています。

「アペンツェラーキャトルドッグ」や「エントレブッハーキャトルドッグ」もまた、スイスの地域名称が由来となっており、これらの犬種がスイスの人々にとって、土地の名がつくほど身近で愛されてきた犬種というのが分かりますね。

ワーキングドッグとしての能力が高い

ゼネンフント4犬種は皆、ワーキングドッグとしての能力が高い犬種です。
FCI(国際畜犬連盟)や、日本での犬種登録を行うJKC(ジャパンケネルクラブ)では「使役犬」として、イギリスのケネルクラブ(KC)やAKC(アメリカ)では「Working」と呼ばれるグループに分類されています。

※なお、FCIでは4犬種すべてが公認されていますが、日本での登録は「グレートスイス」と「バーニーズ」の2犬種のみです。
エントレブッハーはKC・AKCでも登録されていますが、唯一4犬種の中で最も希少な犬種とされるアペンツェラーは、代表的なケネルクラブへの登録はありません。

スイスマウンテンドッグの犬種たちは、ずっしりとした筋肉質な体の構造により、牧畜犬や荷車引きなどの力仕事をはじめ、救助犬や盲導犬などでも幅広く活躍しています。

「トライカラー」の毛色

バーニーズマウンテンドッグをご存知の方なら、その特徴的で美しい3色の被毛をイメージする人も多いのではないでしょうか。
黒・茶・白のバランスが取れた3色の被毛は「トライカラー」と呼ばれ、スイスマウンテンドッグは4犬種ともこの特徴的な配色の被毛を持っています。

なお、唯一アペンツェラーキャトルドッグのみ、基本色に「ハバナブラウン」と呼ばれる黒以外の毛色が認められています。

スイスマウンテンドッグ4犬種の違い

スイスマウンテンドッグ4犬種の違い

パッと見た写真では、バーニーズマウンテンドッグ以外の3犬種の違いが分かる人は少ないかと思います。
4犬種の中で、唯一の長毛種であるバーニーズは見た目的にも非常に分かりやすいですが、それ以外の3犬種は短毛で、トライカラーの毛色も共通しているため、見分けるのは困難でしょう。

しかし、実際に見てみると、その違いは明らかです。
実はスイスマウンテンドッグたちは、体の大きさが全く違います

4犬種の中で最も大きな体を持つ「グレートスイスマウンテンドッグ」は、オスの場合、成犬になると体重60kgを超え、体高も人間の大人のお尻くらいまで成長します。
一方で、エントレブッハーキャトルドッグは、その半分にも満たない25kg程度で、体高も大人の膝程度までにしかなりません。

同じ祖先でも、ここまでサイズが違うのは興味深いですよね。

スイスマウンテンドッグ4犬種の比較

では、実際それぞれがどんな特徴を持っているのか、主要な指標を交えご紹介していきたいと思います。

グレートスイスマウンテンドッグ

グレートスイスマウンテンドッグ
別名 グレータースイスマウンテンドッグ
体高 オス:65cm〜72cm
メス:60cm~68cm
体重 オス:52kg〜63kg
メス:38kg〜50kg
平均寿命 8歳〜11歳
特徴 短毛、ダブルコートで抜け毛は少なめ。超大型犬で、引っ張りあう遊びが好き
性格 子ども好きで温厚
かかりやすい病気 品種固有の病気はない
2021年国内新規登録頭数 9頭
主要登録機関 FCI、JKC、KC、AKC

グレートスイスマウンテンドッグは、ゼネンフント4犬種の中で一番大きい身体を持ちますが、大変穏やかな性格をしており、子どもがいる家庭でも比較的飼いやすい犬種です。
しかし、じゃれているだけでも力は大変強いので、そこには注意が必要でしょう。

国内での個体数は少ないものの、日本でのブリーディングもされており、60万円前後で購入できます。
犬種固有の遺伝的な病気はありませんが、大型犬に多く見られる胃捻転・胃拡張などには注意が必要です。

バーニーズマウンテンドッグ

バーニーズマウンテンドッグ
別名 デュールベッヘラー
体高 オス:64cm〜70cm
メス:58cm〜66cm
体重 オス:36kg〜52kg
メス:31kg〜43kg
平均寿命 7歳〜10歳
特徴 長毛のダブルコート。飼い犬として改良された犬種
性格 穏やかな性格
かかりやすい病気 股関節形成不全・悪性腫瘍・無菌性髄膜炎・進行性網膜萎縮症
2021年国内新規登録頭数 957頭
主要登録機関 FCI、JKC、KC、AKC

バーニーズマウンテンドッグは、スイスマウンテンドッグの中では唯一の長毛犬種です。
日本での新規登録件数では、大型犬の中で4位(2021年)に入るほどの人気犬種ですが、一時は品種自体が絶滅の危機に瀕するほど、頭数が激減した歴史もあります。

ペット用として改良されてきたため、スイスマウンテンドッグの中でも飼いやすく、結果として国内需要も多くなりました。
日本でのブリーダー数も多く、20万〜60万ほどで購入が可能です。

アペンツェラーキャトルドッグ

アペンツェラーキャトルドッグ
別名 アペンツェルキャトルドッグ
体高 オス:52cm〜56cm
メス:50cm〜54cm
体重 22kg〜32kg
平均寿命 12歳〜15歳
特徴 短毛。よく吠え、声が大きい。尻尾が丸まっている
性格 活発な犬種で、子どもが苦手な犬が多く、しつけは難しい
かかりやすい病気 品種固有の病気はない
2021年国内新規登録頭数 0頭
主要登録機関 FCI

農場での番犬や護衛犬、荷車引きといった仕事を行う使役犬の代表です。
スピッツ系の血統が混ざっているため、高く大きな声で吠えるのが特徴。
ペット目的での交配はされていないため、しつけは難しいですが、信頼した家族には愛情深い性格をしています。

JKCをはじめ、KC、AKCでも登録がされておらず、4犬種の中で最も希少な犬種です。

エントレブッハーキャトルドッグ

エントレブッハーキャトルドッグ
別名 エントレブッフマウンテンドッグ
体高 オス:43cm〜53cm
メス:40cm〜50cm
体重 オス:22kg〜29kg
メス:18kg〜25kg
平均寿命 11歳〜13歳
特徴 短毛。4犬種の中で一番小柄。筋肉質。
性格 活発で明るく勇敢。しつけがしやすい
かかりやすい病気 股関節形成不全・膝蓋骨脱臼・眼疾患・泌尿器疾患
2021年国内新規登録頭数 0頭
主要登録機関 FCI、KC、AKC

小柄な体格とは裏腹に、とても活発でパワフルな犬種で、サイズ的には中型犬に入るものの、運動量は大型犬並みに必要とします。
明るく元気な性格で、しつけは比較的しやすいですが、小さい頃からの社会化トレーニングは必須事項。
JKCでの登録はなく、日本国内ではほぼ見ることがない犬種です。

スイスマウンテンドッグは魅力がいっぱい

スイスマウンテンドッグは魅力がいっぱい

いかがでしたでしょうか?
同じルーツと毛色を持つスイスマウンテンドッグたちは、共通の魅力もありながら、それぞれ個性的な特徴を持ち合わせています。
どの犬種もワーキングドッグとしての能力が高く、家族などの信頼した相手に対しては、愛情たっぷりで接してくれるため、人間の良きパートナーとなってくれるでしょう。

日本ではなかなか見られない犬種もありますが、今後もしJKCでの登録が行われたら、日本国内でも見られる日がいつか来るかもしれませんね。

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