コーギーに多い「変性性脊髄症」ってどんな病気?原因や症状、治療法について

コーギーに多い「変性性脊髄症」ってどんな病気?原因や症状、治療法について

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脊髄の神経細胞が変性することで機能障害が現れる病気を、変性性脊髄症といいます。
変性性脊髄症は痛みを伴わないのが特徴で、近年、ウェルシュコーギーでの発症率が高いことが分かってきました。
今回は、そんな変性性脊髄症の原因や主な症状、発症しやすい犬種や治療法について解説します。

変性性脊髄症の症状

変性性脊髄症の症状

変性性脊髄症には、症状の進行度合いによって、4つのステージが設けられています。

ステージ1 両うしろ足のふらつきがあるが、まだ四肢での歩行は可能
ステージ2 両うしろ足の麻痺が進行し、四肢での歩行が困難。前足は正常
ステージ3 前足にもふらつき、ナックリング※が認められるが、まだ歩行は可能。自力での排泄困難や下半身の筋肉萎縮がみられる
ステージ4 四肢が麻痺して、起立・歩行困難。呼吸困難、発声障害、嚥下困難、全身の筋委縮などが認められる

※ナックリング:足先を握ったような状態で、足の甲を地面につけて起立・歩行すること

うしろ足の感覚が低下するため、初期では後ろ足をすって歩く、腰がふらつく、足がもつれるなどの様子がみられます。
進行すると、うしろ足を揃えた状態でうさぎ跳びのように歩いたり、下半身を引きずって歩くようになり、次第に前足へと症状が進行します。
ステージ2までは元気・食欲に影響はありませんが、徐々に排泄が困難になり、最終的に麻痺が脳へ達すると呼吸不全に至ります

変性性脊髄症の原因

変性性脊髄症の原因

変性性脊髄症の原因について、ハッキリとした原因は解明されていません。
しかし、最近では「変性性脊髄症を発症した犬には、特定の遺伝子(SOD1遺伝子)に変異がみられる」ことが分かっています。
SOD1遺伝子とは、抗酸化作用のあるタンパク質の産生機能を持つ遺伝子で、変異すると何かの引き金で変性性脊髄症を引き起こすといわれているのです。
変異したSOD1遺伝子を持っているすべての犬が発症するわけではないようですが、遺伝子変異のない犬よりも発症リスクは高いといえるでしょう。
血縁に変性性脊髄症の発症犬がいる場合は、変異したSOD1遺伝子を持っている可能性が高く、特に注意が必要です。

変性性脊髄症になりやすい犬種

変性性脊髄症になりやすい犬種

変性性脊髄症は、ジャーマン・シェパード、バーニーズマウンテンドッグ、ボクサー、コーギーに多くみられます。
日本では大型犬の飼育頭数が少ないため、特にウェルシュ・コーギーの発症報告が多い傾向があり、その数は徐々に増えてきています。
なお、どの犬種であっても症状は8~11歳頃に後ろ足から現れ始め、半年から3年ほどかけてゆっくりと進行していきます。

変性性脊髄症の治療法・ケア

変性性脊髄症の治療法・ケア

残念ながら、現在のところ変性性脊髄症には有効な治療法が見つかっていません
そのため、発症後はできる限り発症犬の生活の質(QOL)を維持する目的で、ステージに合わせたケアを行います。

理学療法

リハビリを通して適度な運動を行い、筋肉の萎縮・症状の進行を遅らせます。
早い段階で積極的にリハビリを行っておくことで、自力歩行ができる期間の延長につながります。

四肢の保護

足を擦って歩くと爪がすり減り、足に傷がついてしまうため、ゴム製のカバーや靴下を履かせてあげましょう。
コンクリートなど硬い地面の上は足に負担がかかりやすいので、可能であれば草の生えた柔らかい道を歩くようにします。

体重管理

体重が増えると四肢や関節の負担が増えるため、適切な体重維持が重要です。
変性性脊髄症は痛みがないため、ある程度進行するまで食欲は衰えませんので、食事管理は徹底して行いましょう。

カートや車いすの活用

自力での起立・歩行が難しい場合でも、カートや車いすを活用すれば運動量を維持することができます。
麻痺が前足まで進んでしまうと自走型のカートや車いすは使えませんが、まだそれほど進行していない時には有効です。
なかにはカートに乗ったまま排泄ができるタイプもあるため、愛犬に合ったものを選びましょう。

排泄時の介助

排泄のコントロールが難しくなったら、おむつやマナーベルトを活用しましょう。
尻周りを清潔に保つため、動物病院で定期的におしり周りの毛刈りをしてもらうようにしてください。
状態が進行すると圧迫排尿が必要になるケースもあるため、獣医さんと相談のうえ行います。

体位変換など、床ずれ防止ケア

ずっと同じ体勢でいると「褥瘡(じょくそう)」と呼ばれる床ずれができるため、こまめな体位変換が必要です。
敷物はなるべく高反発性のものを選び、夏場など暑い時期には通気性の良い素材の敷物を用意してあげましょう。

食事の介助

末期では舌の動きが悪くなるため、嚥下障害によって食事が難しくなることがあります。
誤嚥を防ぐため、クッションなどを使って頭を支えてあげつつ、食事は柔らかいものを少しずつ与えましょう
水を飲むことが難しくなってきたら、スポイトやシリンジなどで直接飲ませてあげると良いですよ。

気になる様子があれば早めに動物病院を受診しよう

気になる様子があれば早めに動物病院を受診しよう

変性性脊髄症は発症の原因をはじめ、有効な治療・予防法などもハッキリと解明されていない病気です。
ですが、初期に適切な体重管理をしたり、まあだ症状が軽いうちにリハビリを行っておくことで、体への負担を少しでも軽くすることは可能です。
後ろ足のもつれや何となく歩き方がおかしいなど、少しでも愛犬の様子に違和感を感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。