犬も嘘をつく!?実験で証明された犬の知能
4月1日といえば「エイプリルフール」。
一年に一度、「罪のない嘘をついても良い1日」とされ、多くの企業も冗談を交えた面白い嘘を発信して話題となったり、ちょっとしたお祭り騒ぎになる1日です。
そんな「嘘」ですが、ふと犬も嘘をつくことがあるのかな?と思ったことはないでしょうか。
今回は、犬の「嘘」について解説していきます。
目次
犬も嘘をつく
実は、人間だけでなく犬も嘘をつくことがあります。
しかし、それは人間とはまた少し違った性質を持つもの。
人間の場合、言葉を用いて嘘をつくことができるため、様々な思惑が入り混じっています。
見栄のためだったり、トラブルを避けるためであったり、自分の罪を隠すためだったり・・・。
時には相手を思いやっての嘘や、逆の相手を貶める嘘をつく人もいるでしょう。
一方で、犬の嘘はいたってシンプル。
それは、「自分のメリットのため」という一点に尽きます。
「こんな時は嘘をついた方が(欺いた方が)、自分にとって良いことがある!」と学習した場合、犬も嘘をつくことがあるのです。
犬のウソを研究した論文が発表
2017年、海外の学術サイト「Animal Cognition」で「犬は経験により学習をし、戦略的な嘘をつくことが出来る」という論文が発表され、話題を集めました。
この論文を発表したのは、スイス・チューリッヒ大学の研究者「マリアン・ヘバーライン」氏。
ヘバーライン氏は、自身が飼っている犬の行動を見て、一つの疑問を持ちます。
それは、「2匹のうちの1匹が、相手の注意をそらし、その間に相手の寝床を奪う」という行動。
つまり「相手を騙して、自分が快適な場所を得た」というわけです。
この様子を見ていたヘバーライン氏は、「相手が人間の場合でも、犬はこのような狡猾な行動をとるのか?」と考えました。
そこで、疑問を解消すべく、学習をするための訓練と実験が行われました。
ヘバーライン氏による実験と検証結果
ヘバーライン氏が行った実験は、以下のようなものです。
事前訓練
犬に、見知らぬ人物2名とパートナーを組ませ、ご褒美の入った箱の前に連れて行かせる。
パートナーはそれぞれの「役割」に応じて行動する。
1人は「協力的」なパートナー。犬がこのパートナーを箱の前に連れて行くと、この人物は箱の中のご褒美を犬に与える。
1人は「競合的」なパートナー。犬がこのパートナーを箱の前に連れて行くと、この人物は箱の中のご褒美を見せびらかすだけで、自分で持って行ってしまう。
こうした訓練の段階を経て、次は犬の前に3つの箱を用意しました。
犬に用意された3つの箱
- 1つ目の箱には、犬の大好物である「ソーセージ」が入っている
- 2つ目の箱には、犬がまあまあ好きな「ビスケット」が入っている
- 3つ目の箱は、何も入っておらず、空っぽの箱
そして、先ほどの2人のパートナーに加え、登場人物に「飼い主」を追加しました。
実験
犬にはまず、この3つの箱のどれかに、協力的・競合的なパートナーを1人ずつ連れて行くように指示が出されます。
この時のコマンドは「おやつを見せて」というコマンドに統一されています。
そして、パートナーを連れて行った後は「飼い主」を箱の前に連れて行くことが出来ます。
この時、飼い主は「残っているご褒美をすべてくれる人物」という設定になっています。
この実験を27頭の犬たちが、2日間行い検証がされました。
犬の利益
まず、犬は飼い主より前にパートナーたちを、箱の前に連れて行かなければなりません。
犬の目線から考えた場合、協力的なパートナーは箱の中身をくれる人物なので、ソーセージやビスケットの箱の前に連れて行っても、問題ありません。
次に連れて来ることが出来る「飼い主」も「残っているご褒美をすべてくれる人物」のため、結果的に犬はソーセージ・ビスケット両方のご褒美が得られます。
しかし、競合的なパートナーの場合はどうでしょう。
競合的なパートナーは、犬に箱の中身を与えることをしてくれません。
まあまあ好きなビスケットはまだしも、ソーセージの箱の前に連れて行ってしまうと、パートナーに取られ、次に飼い主を連れてきても大好物が得られないのです。
検証結果
1日目
協力的なパートナー+飼い主 | 協力的なパートナーを「大好物」の箱に連れて行く確率が、偶然と呼べるものより高かった |
競合的なパートナー+飼い主 | 競合的なパートナーを「大好物」・「まあまあ」の箱に連れて行く確率は同程度だった |
2日目
協力的なパートナー+飼い主 | 協力的なパートナーを「大好物」の箱に連れて行く確率は80%ほどに高まった |
競合的なパートナー+飼い主 | 競合的なパートナーを「大好物」の箱に連れて行く確率が20%以下に減り、ほとんどは「空っぽ」の箱に誘導した |
同じコマンドを使用しているにも関わらず、パートナーによってここまで大きな差が出るのは驚きの検証結果です。
この実験の結果、ヘバーライン氏は「犬は自分がすべてのご褒美がもらえる方法を考え、利益が最大となる戦略を選んだ」と結論づけました。
犬の嘘は、戦略的なウソ
ヘバーライン氏の論文による実験結果は、大変興味深いものでした。
犬の知能は平均的に、人間で言うと大体「2歳〜4歳」くらいといわれています。
人間の子どもも、2歳半から3歳ごろの間に、嘘を覚えるということが研究で分かっており、3歳を過ぎると「意識的に嘘をつく」ようになるそうです。
そう考えると、同じくらいの知能を持つ犬たちが「学習」し、自分の利益のために人を騙すといった、いわゆる「嘘をつく」行動を取っても何ら不思議はありません。
犬たちは、自分の頭でしっかりと考え「戦略的な謀略を画策出来る」のです。
普段の生活でも見せる犬の可愛らしい「嘘」
今回の実験では「おやつ」というご褒美に対しての、犬の行動研究でしたが、普段の生活でも犬たちは「嘘」をついたと思わせる行動を見せます。
例えばお散歩に行っている時、疲れたフリをして抱っこの催促をしたり。
病気や、怪我をしたフリをして飼い主さんに甘えたり。
これらの「嘘」は、以前具合が悪かったりした時に、飼い主さんが優しくしてくれたことを覚えているからです。
優しくされたり、甘えられることを期待しての嘘とは、なんとも可愛らしいものですね。
しかし、あまりに続くようなら油断は禁物。
犬たちは言葉を話せないため、本当に具合が悪いか、怪我をしている可能性もあり得ます。
普段から愛犬の状態をしっかりと観察し、嘘を見抜ける力を養いましょう。
そして、可愛い「嘘」だと確信できたら、乗ってあげるのも良いかもしれませんね。