犬の「まろ眉」はなぜできる?可愛い眉毛の仕組みや歴史、犬種について
犬の模様といえば様々なものがありますが、なかでも「麻呂眉」は特徴的な柄です。
犬の麻呂眉はまるで平安時代を彷彿とする見た目をしているので、面白くて可愛いと人気があります。
そこで今回は、犬の麻呂眉の仕組みや歴史、麻呂眉の遺伝子を持つ犬種について解説します。
目次
麻呂眉=タン・マーキング
犬の麻呂眉は、正式名称を「タン・マーキング」といいます。
タン・マーキングは、犬の口周りや手足、胸元に生えている茶色や白、黄褐色の毛部分を指します。
つまり、目の上に現れたタン・マーキングのことを「麻呂眉」と呼んでいるのです。
犬が麻呂眉を持つ明確な理由は分かっていませんが、一説には「外敵から目を守るため」といわれています。
目が四つあるように見せることで、鳥などに目を突かれるリスクを分散させているのでしょうか。
犬の麻呂眉は、可愛いだけではなく、大切なカモフラージュというわけですね。
ちなみに、タンの名称はオーク樹皮であるタナム(タンナム)から付けられています。
タナムは本革製品のなめしに使用されるものであり、皮業界ではよく知られている材料です。
麻呂眉の遺伝子を持つ犬種
麻呂眉の遺伝子を受け継ぐ犬種は複数存在します。
日本国内で飼育されている犬では、以下のような犬種が当てはまります。
- 柴犬
- チワワ
- パピヨン
- ビーグル
- ミニチュア・ピンシャー
- ジャーマン・シェパード
- シベリアン・ハスキー
- アメリカン・コッカ―・スパニエル
- ドーベルマン
これらの犬種には、タン・マーキングを持つ個体が多いでしょう。
もちろんタン・マーキングが出ない場合もありますが、他の犬種に比べると発現率は高め。
ちなみに、ドーベルマンのタンは一般的なものより濃く、英米では「ラスト」や「ラストレッド」と呼ばれています。
タンポイントを持っている犬だけが麻呂眉になる
タン・マーキングが現れるのは、タンポイントという遺伝子をペアで持っている犬だけです。
タンポイントとは、毛色の基本である黒と茶色のメラニン色素量を決める「アグーチ遺伝子」のひとつ。
アグーチ遺伝子には4つの種類があり、どれを持っているかによって、犬の体に現れる模様や色は変化します。
なお、タンポイントは劣性遺伝子であり、遺伝しにくい性質を持っています。
つまり、両親がどちらともタンポイントの遺伝子を持っている場合しか、麻呂眉は現れないということ。
なかでも模様がハッキリしているものは珍しいですが、黒柴の場合は特にくっきり見えます。
黒柴といえば麻呂眉がチャームポイント
黒柴をはじめ、すべての柴犬はタン・マーキングを持っています。
ではなぜ黒柴ばかり麻呂眉が目立つのか、それはタン・マーキングの色が白や黄褐色だからです。
黒ベースの被毛に白や黄褐色の模様があると、暗い部分と明るい部分の差が激しく、コントラストは強くなります。
すると、タン・マーキングの部分が浮き上がったように見え、くっきりとした麻呂眉が現れるのです。
ちなみに、よく見ると赤柴にも白い麻呂眉があります。
黒柴と違ってベースが明るいので分かりづらいですが、犬によっては結構はっきり見えますよ。
残念ながら、白柴は白ベースに白のタン・マーキングなので、模様は同化して見えません。
ハスキーの麻呂眉は成長とともにつながることが多い
ソリ犬として知られるシベリアン・ハスキーも、麻呂眉のような模様を持つ犬種です。
ただ、シベリアン・ハスキーの場合、子犬の頃は麻呂眉模様がくっきり出ていますが、成長につれて目周辺の色が変化します。
徐々に目の周り全体が白くなり、大人になるころには顔先の白色と繋がって麻呂眉がなくなることが多いでしょう。
なお、シベリアン・ハスキーは、子犬の頃と成犬時の印象が大きく変わりやすい犬種です。
顔立ちをはじめ、顔の毛色がガラッと変わることも多いので、変化の過程を楽しめるのも魅力の一つ。
子犬はあっという間に成長するので、麻呂眉が消えないうちにたくさん写真を撮っておけるといいですね。
麻呂眉=四ツ目といわれて避けられていた?
今でこそ「可愛い」と人気の麻呂眉ですが、昔は縁起が悪いと避けられていたこともあります。
いつからかは分かりませんが、麻呂眉は目が四つあるように見えて不吉だから飼うなという人もいたのです。
四ツ目は飼い主を食べてしまう、四ツ目を飼うと飼い主が短命になる、性格がきついなど、色々と噂されていたようです。
なお、インドの神話には「人間を死の国へ連れていく閻魔大王の飼い犬」として、四ツ目の生き物が出てきます。
もちろんこれはただの神話で、犬に麻呂眉模様があったからといって悪いことが起こるという説に信ぴょう性はありません。
ただ、そう信じられていた時代は確かにあり、今でも年配の方や地域柄によっては麻呂眉を避けることもあるのだとか。
犬の麻呂眉は、けっして悪い模様ではありません。
可愛い愛犬の個性として受け止め、いたずらに避けることはしないでくださいね。
愛犬の麻呂眉模様を探してみよう
麻呂眉の正式名称はタン・マーキングであり、目の上以外にも様々な部分に現れます。
麻呂眉を持つ代表的な犬としては黒色の柴犬が挙げられますが、他にも麻呂眉の遺伝子を持った犬種は複数あります。
違う犬種でありながら似た模様を持つというのはなんだか不思議ですが、それも犬の魅力のひとつです。
ぜひ、愛犬の目の上をじっくり観察し、麻呂眉模様がないかチェックしてみてはいかがでしょうか。