ファンコーニ症候群ってどんな病気?症状や原因、好発犬種や治療・予防法について
ファンコーニ症候群は、腎臓にある尿細管の機能低下によって起こる病気です。
この病気は、何らかの理由で尿細管組織が機能不全に陥ることでブドウ糖などが過剰に尿中に排泄されます。
今回は、このファンコーニ症候群の原因と症状、治療法やなりやすい犬種について解説します。
目次
【原因】遺伝性と後天性で原因は異なる
ファンコーニ症候群は、犬の腎臓病の一種です。
世界でも比較的珍しい病気であり、日本での症例は多いとはいえません。
ファンコーニ症候群を発症すると、尿中にアミノ酸、リン酸、炭酸水素などが排泄されます。
これらは本来体内に吸収されるべき成分であるため、尿中に排泄されてしまうことで栄養不足に陥ります。
なお、ファンコーニ症候群には、遺伝性のものと後天性のものの2種類があります。
後天性のものでは、主に重金属中毒や薬物による銅蓄積、低カリウム血症などが原因で発症します。
その他の要因
- ネフローゼ症候群
- 上皮小体機能亢進症
- ビタミンD欠乏症
- 移植に関連した間質性腎炎
【症状】尿量や排尿回数の増加、尿の色の変化、失禁、脱水など
ファンコーニ症候群の主な症状は、飲水量や排尿に関することがほとんどです。
具体的には、尿量や排尿回数の増加、尿の色が薄い、失禁、脱水症状を起こすなどが挙げられます。
尿糖の影響で膀胱に細菌感染が起こりやすいため、膀胱炎の検査で判明するケースも多いでしょう。
なお、ファンコーニ症候群の場合、初期症状はほとんどありません。
多飲多尿以外は特に気になる症状が出ないため、飼い主さんも気付かないことが多いです。
発症から数年たち、体重減少や栄養不足による毛ヅヤの低下がみられた際に初めて来院するケースも少なくないといわれています。
ファンコーニ症候群が進行し末期状態になると、ぐったりして元気がなくなり、命に関わることもあります。
ファンコーニ症候群になりやすい犬種は?
ファンコーニ症状群を発症しやすい犬種としては、まずバセンジーが挙げられます。
アメリカでのバセンジー発症率は、10~30%と非常に高く、強い遺伝性があると考えられています。
その他、シェットランドシープドッグ、シュナウザー、ヨークシャーテリアなどの犬種でも、発症が報告されています。
ファンコーニ症候群になりやすい犬種
- バセンジー
- シェットランドシープドッグ
- ミニチュア・シュナウザー
- ヨークシャー・テリア
- ウィペット
- ラブラドールレトリバー
- イングリッシュ・コッカースパニエル
- ノルウェージャンエルクハウンド
- ミニチュア・ダックスフンド
【治療法】喪失したリン、カリウム、ビタミンを補充する
ファンコーニ症候群の治療は、遺伝性か後天性かで異なります。
遺伝性のファンコーニ症候群は残念ながら有効な治療法がなく、完治を望むことはできません。
ただ、早期発見のうえ対症療法を行うことで良好な状態を維持できれば、天寿を全うすることもできるでしょう。
対して後天性のファンコーニ症候群は、原因である疾患を治療することで改善するケースが多いです。
具体的な治療法としては、喪失したリンとカリウム、ビタミンを投与するというもの。
体にとって必要な成分を薬剤で補うことで、尿として排出されてしまっても良いようにするのです。
また、重炭酸ナトリウム製剤を投与して、血液が酸性に傾く現象「アシドーシス」を予防することも大切です。
【予防】明確な予防法は分かっていないので、定期健診で発見しよう
ファンコーニ症候群を予防する明確な方法は、まだ分かっていません。
ただ、バセンジーはファンコーニ症候群の好発犬種であるため、定期健診は必須です。
体重や様子の変化など、できるだけ早く気付けるように普段からよく様子をみておくことが大切といえるでしょう。
なお、ファンコーニ症候群の診断は血液検査や尿検査で行います。
血液検査上は血糖値が正常であるにもかかわらず、尿検査で尿糖が出た場合には、ファンコーニ症候群の疑いがあります。
また、元となった疾患を特定するために、甲状腺ホルモンや上皮小体ホルモン等の検査を行うケースもあります。
ファンコーニ症候群になってしまったら
愛犬がファンコーニ症候群を発症してしまったら、自宅でできるケアを徹底しましょう。
まずは多飲多尿による脱水を予防するため、新鮮な水を常に飲めるよう水場を増やすことが大切です。
トイレの回数が増えるからといって水分を制限してしまうと、体内の老廃物が排出されずに溜まってしまうので要注意。
十分な水分を摂取させることは、愛犬の腎機能維持のために必要不可欠なポイントと覚えておきましょう。
また、食事は高タンパク質・高カロリーのものを与えるようにします。
ファンコーニ症候群の犬では、本来体に必要なぶんのタンパク質も尿中に排出されてしまいます。
特に成長期の犬ではタンパク質欠乏を起こさないよう、ドッグフードは高栄養なものを与えるようにすること。
おかずやトッピングとして、タンパク質含有量の多いササミを与えても良いですね。
なお、ファンコーニ症候群を発症すると、ブドウ糖やミネラル、ビタミンなど様々な栄養素が足りなくなります。
これらすべての栄養素をドッグフードで十分に補うのは難しいため、犬用サプリメントを上手に活用すると良いでしょう。
普段から愛犬の様子をよくチェックしておこう
初期のファンコーニ症候群は目立った症状がなく、多飲多尿以外は元気に過ごすことができます。
そのぶん、飼い主さんが見逃しがちな病気でもあるため、普段から愛犬の様子をよく観察しておきましょう。
ファンコーニ症候群は早期発見・早期治療が改善のポイントともいえるため、気になることがあれば動物病院へ相談を。
1年に1度は尿検査と全身の健康診断を受け、去年と変わった点がないか調べてくださいね。