大型犬に多い「股関節形成不全」とは?原因や症状、対策について

大型犬に多い「股関節形成不全」とは?原因や症状、対策について

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股関節形成不全は、主に大型犬種にみられる関節疾患です。
股関節が緩んでいたり、骨が変形していたりすることで、様々な症状がみられます。
この記事では、股関節形成不全の原因と症状、なりやすい犬種や治療法・予防法について解説します。
愛犬が股関節形成不全になってしまった時のケアについても解説していくので、ぜひ参考にしてくださいね。

【原因】骨の変形や股関節のゆるみで、関節部がうまくかみ合わない

【原因】骨の変形や股関節のゆるみで、関節部がうまくかみ合わない

股関節形成不全は、関節部分の骨が変形していたり、股関節が緩んだりすることで起こる病気です。
生まれつき骨のゆがみや股関節の緩みがあると股関節がうまくかみ合わず、関節の中で炎症が起こります。
骨の変形には遺伝性があるといわれていますが、栄養や運動などの環境も関与しているとみられます。
また、肥満や激しい運動による関節への負荷なども、この病気の発症に関わっています。

なお、股関節形成不全を患う犬では、逆三角形のボディビルダー体型がみられます。
これは痛む股関節に体重をかけないよう、犬が無意識に前肢へ体重を移動させて動いているからです。
前肢の使用量が増えると、そのぶん筋肉量も増えるため、上半身のみ筋肉質になるのですね。

【症状】後肢のふらつき・歩行異常が特徴的

【症状】後肢のふらつき・歩行異常が特徴的

股関節形成不全の主な症状は、以下の通りです。

  • 走らない
  • 横すわりで座る
  • 運動をしたがらない
  • 頭を下向きにして歩く
  • 散歩の途中で座ってしまう
  • 立ちあがるのに時間がかかる
  • 立ち姿勢で、後ろ足の左右の接地点間隔がせまい
  • 歩く時にお尻が左右に揺れる(モンローウォーク)

股関節形成不全の特徴的な症状は、後肢のふらつきです。
まるでうさぎのようにピョンと地面をけるように歩くことから、ウサギ飛び用走行とも呼ばれます。
その他、寝ている状態から起き上がった時の歩き方にも異常がみられることがあります。

なお、股関節形成不全の症状が現れやすいのは、若年期と老年期です。
若齢期の場合は生後1歳未満で発症し、股関節の緩みが炎症を起こし、鋭い痛みを感じます。
中齢から高齢にかけて発症した場合は、股関節のゆるみではなく、股関節の形成異常による症状がみられます。

股関節形成不全になりやすい犬種は?

股関節形成不全になりやすい犬種は?

股関節形成不全になりやすいのは、以下の犬種です。

  • ラブラドール・レトリーバー
  • ゴールデン・レトリーバー
  • ジャーマン・シェパード・ドッグ
  • バーニーズ・マウンテンドッグ
  • オールド・イングリッシュ・シープドッグ
  • セント・バーナード
  • ロット・ワイラー
  • ニューファンドランド

犬の股関節形成不全は、遺伝的な要因が7割、環境的な要因が3割といわれています。
大型犬は短期間で体が大きく成長するため、骨の成長と筋肉形成のバランスが崩れやすい傾向があります。
特に、子犬期に過度な栄養を摂取すると関節が不安定になりやすいため、注意が必要です。

なお、股関節形成不全は小型犬や中型犬にも起こりうる病気です。
ただ、小型犬の場合は股関節脱臼と間違われやすく、成長期での診断が難しいでしょう。
動物病院にかかる時は、できるだけ正確に症状を説明し、様子を撮った動画をみせるとスムーズな診断を受けられます。

【治療】内科的治療と外科的治療がある

【治療】内科的治療と外科的治療がある

股関節形成不全症は、主に内科的な治療で改善を目指します。
内科的治療としては、痛み止めを使った疼痛の改善・緩和が一般的。
根本的な原因を取り除くことはできませんが、常に薬を飲み続けなくてよいケースもあります。
症状が落ち着いている時は、できるだけその状態を長く維持できるように、治療やケアを行います。

内科的治療では症状が治まらない場合、外科的治療を行うこともあります。
外科的治療では、股関節全置換術・参天骨盤骨切り術・大腿骨頭・骨頸切除術などがあります。
術式ごとに難易度や術後の回復スピードが異なるため、獣医師とよく相談のうえ行うことが大切です。

【予防】栄養バランスの良い食事で体重管理を

【予防】栄養バランスの良い食事で体重管理を

股関節形成不全を予防するには、適切な体重を維持することが大切です。
体重が過度に増えると股関節への負担が大きくなり、股関節形成不全を発症しやすくなります。
大型犬に合った栄養バランスの食事を与え、関節や骨、筋肉を強化しておきましょう。

股関節形成不全になってしまったら

股関節形成不全になってしまったら

愛犬が股関節形成不全になってしまったら、体重管理と環境整備を徹底すること。
肥満にならないように、日頃からこまめな体重測定を心がけておくと良いでしょう。

また、フローリングなど滑りやすい床材の場合、犬は常にふんばっていなければいけません。
ふんばりは弱った股関節にとって負担が大きいため、床には滑り止め用のマットを敷くなどして対応しましょう。
足の裏のケガ伸びてくると滑りやすくなるため、足の裏の毛は1ヶ月に1度程度カットしてください。
関節の過度な負担を避けるため、ジャンプや過度な運動はさせないようにすることも大切です。

早期発見・早期治療につとめよう

早期発見・早期治療につとめよう

股関節形成不全は、特に大型犬や超大型犬に多い病気です。
治療法は年齢や症状の程度によって変わりますが、いずれも治療は早ければ早いほど良いとされています。
日頃から愛犬の歩行や動作に変わった様子がないか、意識を向けておきましょう。