肥大型骨形成異常ってどんな病気?原因や症状、好発犬種や治療・予防法について
肥大型骨形成異常は、主に大型犬の子犬にみられる病気です。
早いケースでは生後2ヶ月から発症することもあるため、大型犬の飼い主は知識として知っておきましょう。
今回は、肥大型骨形成異常の原因と症状、なりやすい犬種や治療・予防法を解説します。
目次
【原因】食事の影響やウイルス感染症による骨の炎症
肥大型骨形成異常の明確な原因は、まだはっきり分かっていません。
現状もっと有力な説としては、食事の影響やウイルス感染によって骨の炎症が起きていると考えられています。
肥大型骨形成異常は生後3~4ヵ月の子犬に多くみられる病気で、大きく成長する犬種が発症します。
遅くとも生後8か月には病気の兆候がみられるため、子犬期の健康チェックが非常に重要です。
なお、肥大型骨形成異常は、HODや突発性骨異栄養症、骨ジストロフィーなどと呼ばれています。
インターネットをはじめ、獣医療の学術書で情報を収集する際は、上記のように様々な疾患名で調べるといいでしょう。
【症状】高熱と手首の腫れ・痛みがみられる
肥大型骨形成異常を発症すると、以下のような症状がみられます。
肥大型骨形成異常の症状
- 発熱
- 元気消失
- 動きたがらない
- 手首部分の腫れ・痛み
- 食欲不振・体重減少
肥大型骨形成異常の特徴は、39度以上の発熱と手首の腫れ・痛みです。
大型犬の子犬で、手首を触った時にいつもより温かい、体が熱い場合は注意が必要です。
手首の腫れは前肢に出ることが多いですが、なかには後肢や肩甲骨などにみられることもあります。
なお、肥大型骨形成異常の犬は、体の痛みを常に感じています。
そのため、よく見ると足を引きずっていたり、無気力でうつ状態に陥ったりすることも。
重度の場合は立つことができないほどの痛みが出ることもあるなど、子犬にとっては非常に辛い病気です。
また、あまり多くはありませんが、発育不全を起こし、四肢の変形がみられるケースもあります。
肥大型骨形成異常になりやすい犬種は?
肥大型骨形成異常になりやすい犬種は以下の通りです。
- グレート・デーン
- アイリッシュ・ウルフ・ハウンド
- セント・バーナード
- ボルゾイ
- ボクサー
- アイリッシュセッター
- ワイマラナー
- ドーベルマン・ピンシャー
- ジャーマンシェパード
- ラブラドールレトリーバー
- グレイハウンド
- バセットハウンド
- コリー
成犬時のサイズが大きい犬ほど、肥大型骨形成異常になりやすい傾向があります。
そのため、超大型犬であるグレート・デーンやアイリッシュ・ウルフ・ハウンドは、特に注意が必要です。
なお、理由ははっきりしていませんが、肥大型骨形成異常はメスよりもオスのほうが発症しやすいといわれています。
【治療】鎮静剤によって痛みを和らげる
肥大型骨形成異常の治療では、鎮痛剤による痛みの緩和を行うのが一般的です。
また、長期の食欲不振や発熱などで犬が衰弱している場合には、点滴や回復食によるサポートも行います。
軽度であれば予後は良好なため、痛み止めを上手に使って症状をコントロールすることが大切です。
もし重度の場合は、獣医と相談のうえ今後の治療方針を決めていきます。
肥大型骨形成異常は個体によって症状の度合いにバラつきがあり、重度では後遺症が残ることもあります。
そのため、改善が難しいと判断された場合には、選択肢のひとつとして安楽死を検討するよう勧められることもあるでしょう。
なお、肥大型骨形成異常の診断はレントゲン検査によって行います。
ただし、日本の場合、肥大型骨形成異常の症例は多くないため、見逃されてしまうこともあります。
肥大型骨形成異常を疑う症状がみられた場合は、専門医の診察を受けると良いでしょう。
【予防】過剰な栄養摂取は控えることが大切
明確な予防法はまだ分かっていませんが、もっとも有効な説は「過剰な栄養摂取を控える」というものです。
1歳になるまではヨーグルトやチーズなどタンパク源が多いものはあげすぎないようにし、子犬の成長を無理に早めないこと。
過栄養で肥満にならないように、ドッグフードのカロリーと給与量は適正を守ることも大切です。
なお、大型犬のフードを選ぶ時は、大型犬用として栄養素が調整されているものがベストです。
小型犬の子犬用は大型犬にとって栄養価が高すぎ、かえってトラブルの原因になるため注意してくださいね。
肥大型骨形成異常になってしまったら
軽度の肥大型骨形成異常であれば、適切な治療によって回復することは可能です。
まずは獣医師の指示に従って投薬で痛みを緩和しつつ、早期の体調回復を目指しましょう。
ただし、完治したとしてもしばらくは再発の危険があるため、治療後は安静に過ごさせることが大切です。
ストレスによる症状の悪化や再発を起こさないよう、ストレスの少ない快適な環境を維持してあげてくださいね。
また、肥大型骨形成異常による手首の痛みは、子犬にとって大きなストレスです。
関節に触れるだけでも痛みを感じるため、痛みが強い時は余計な接触を避けてあげたほうがいいかもしれません。
犬がよく過ごす場所や寝床には毛布を敷いてあげると、比較的楽に過ごすことができますよ。
気になることがあればすぐに動物病院へ相談しよう
肥大型骨形成異常は、主に大型犬の子犬にみられる病気です。
軽度であれば適切な治療により回復することも多く、自然治癒するケースもあるでしょう。
ただ、重度の場合は重大な後遺症が残ってしまったり、痛みや発熱による食欲不振で命を落とす可能性も0ではありません。
肥大型骨形成異常に限らず、子犬期は様々な要因で体調が変化します。
大きく成長する子犬と暮らす時は、普段の様子と変わったことはないか、日々の観察を徹底すること。
もし気になる症状がみられたら、できるだけ早めにかかりつけの獣医師へ相談しましょう。