進行性網膜萎縮症ってどんな病気?原因や症状、好発犬種や治療・予防法について

進行性網膜萎縮症ってどんな病気?原因や症状、好発犬種や治療・予防法について

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犬の進行性網膜萎縮症とは、先天性の網膜異常によって光を感知できなくなる病気です。
個体差はありますが、多くのケースでは発症から約2年ほどで完全に視力が無くなり、失明します。
今回は、犬の進行性網膜萎縮症の原因と症状、好発犬種や治療法・予防法について解説します。

進行性網膜萎縮症と診断された後にできることもまとめているので、ぜひ参考にしてくださいね。

【原因】進行性網膜萎縮症の原因は分かっていない

【原因】進行性網膜萎縮症の原因は分かっていない

犬の進行性網膜萎縮症の原因は、まだはっきりと解明されていません
ただし、明確な好発犬種が存在することから、両親や親せきなどから遺伝するといわれています。
なお、網膜は光や映像を管理するために重要な器官であり、変性・委縮すると正常な機能を果たせなくなります。

【症状】視力が徐々に低下し、最終的には失明する

【症状】視力が徐々に低下し、最終的には失明する

犬の進行性網膜萎縮症の症状は、進行度によって異なります
初期では夜間や夕方など暗いところで目が見えにくくなり、モノにぶつかりやすくなります。
薄暗い場所で行動するのを嫌がるようになるため、夕方以降は散歩に行きたがらなくなることもあるでしょう。
慣れ親しんだ環境であれば犬も落ち着いて生活できますが、初めての場所では壁伝いに歩くこともあります。

進行性網膜萎縮症を発症すると、瞳がまるでビー玉のように見えることもあります。
網膜の萎縮によって瞳孔が常に開いた状態になることで、眼底がキラキラと輝いて見えるようになるのです。
本来、瞳孔は光が当たると縮むはずですが、網膜萎縮症になると縮むことができなくなるのですね。

進行性網膜萎縮症は最終的に失明する病気ですが、視力の低下はゆっくり進むため、飼い主さんが気付きにくい傾向があります。
犬はもともと視力よりも嗅覚を使って行動する動物であり、室内であれば習慣から問題なく行動できてしまうのです。
もし以前よりも音に対して敏感になったり、鼻をよく使うようになった場合は、注意して観察しましょう。

進行性網膜萎縮症になりやすい犬種は?

進行性網膜萎縮症になりやすい犬種は?

進行性網膜萎縮症を起こしやすい犬種は、以下の通りです。

  • ラブラドール・レトリーバー
  • アイリッシュ・セッター
  • ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
  • イングリッシュ・コッカ―・スパニエル
  • シェットランド・シープドッグ
  • ミニチュア・ダックスフンド
  • プードル系犬種
  • コリー系犬種

進行性網膜萎縮症は、多くのケースで6歳前後に発症します。
ただし、早いケースでは生後数か月で発症することもあり、その場合は1~2歳で完全に失明します。
発症年齢が早いほど進行も早く、まだ若いうちから失明に至る可能性が高いでしょう。

【治療】網膜の変性を遅らせる点眼や内服薬の投与がメイン

【治療】網膜の変性を遅らせる点眼や内服薬の投与がメイン

犬の進行性網膜萎縮症には、残念ながら明確な治療法がありません
現状は、ビタミンEやアスタキサンチンなどの抗酸化剤やサプリメントの服用が一般的です。
これらには組織や物質の酸化を抑える作用があり、網膜の変性を少しでも遅らせる目的で処方されます。

その他の治療としては、網膜の血流を良くするような点眼薬や内服薬の投与があげられます。
まれにレーザー治療を行うケースもありますが、確定的な治療法ではないため、基本は対症療法が中心です。
なお、合併症による白内障がみられた場合には、白内障の進行を遅らせる点眼薬が別途処方されます。

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【予防】進行性網膜萎縮症の明確な予防法はない

【予防】進行性網膜萎縮症の明確な予防法はない

犬の進行性網膜萎縮症は遺伝性の病気であり、予防することはできません
どんなに健康的な生活をしていても、変異遺伝子を持っている限り予防することは難しいでしょう。

進行性網膜萎縮症の遺伝子は親から子へ引き継がれるため、繁殖計画はしっかり立てること。
交配は遺伝子変異を持たない犬同士で行い、進行性網膜萎縮症を発症する犬は生まれないようにすることが大切です。
ブリーダーやショップなどで犬をお迎えする時は、両親の遺伝子検査について確認しておきましょう。

進行性網膜萎縮症になってしまったら

進行性網膜萎縮症になってしまったら

犬の進行性網膜萎縮症は、命に関わる病気ではありません
痛みを伴うこともないため、症状の進行に伴って犬自身が自然と順応してくれるケースも多いでしょう。
少しでも犬がストレスなく暮らせるように、飼い主さんは改めて生活環境を見直してください。

具体的に行うこととしては、まずトイレやフードボウルなどの配置を固定化することです。
家具などの模様替えはなるべくしないようにし、視力が落ちた状態でも犬が生活しやすいように工夫すること。
犬がぶつかった際に怪我をする可能性のあるものは、あらかじめ取り除いておくことも大切です。

視力が低下すると、通常よりも音に敏感になる犬が多いです。
散歩は人通り・車通りの多いコースを避け、できるだけ静かな道を歩かせてあげましょう。
もし外出を嫌がるようであれば無理に連れ出すことはせず、愛犬のペースに合わせて行動してあげてくださいね。

少しでも異変があれば動物病院で相談しよう

少しでも異変があれば動物病院で相談しよう

進行性網膜萎縮症の場合、発症から数年かけて症状が進行していきます。
明確な治療法はまだ見つかっていないものの、早期発見・早期治療はどんな病気にも必要です。
もし愛犬に気になる様子がみられたら、できるだけ早めに動物病院で視力検査を受けるようにしましょう。