コーギーの尻尾はなぜ短い?犬の断尾の歴史と役割、犬種について

コーギーの尻尾はなぜ短い?犬の断尾の歴史と役割、犬種について

公開日:

丸いお尻がチャームポイントのコーギーは、尻尾が短い犬として知られていますよね。
実は、コーギーの尻尾は生まれつき短いのではなく、生まれてすぐ人為的に「断尾」されています。
この記事では、コーギーが尻尾を切られる理由をはじめ、断尾の歴史と役割、断尾の対象になる犬種を解説します。

コーギーの尻尾は「牛に踏まれて怪我をしないため」に切られていた

コーギーの尻尾は「牛に踏まれて怪我をしないため」に切られていた

コーギーの尻尾が短く切られていた本来の理由は「尻尾を牛に踏まれてつぶされないように」というものです。
コーギーが牧羊犬として活躍していた時代、長い尻尾は牛追いの最中に踏まれる可能性が高いとされていました。
尻尾を牛に踏まれた場合、そのまま転倒してほかの犬に踏まれたり、傷口から感染症を起こしたりする可能性もあります。
怪我のリスクを少しでも減らすという目的で、コーギーは生まれてすぐに尻尾を短く切られるようになったのです。

キツネと間違われないために切られていたという説もある

キツネと間違われないために切られていたという説もある

尻尾が長いコーギーはキツネと間違われやすいため、断尾していたという説もあります。
もともとコーギーの尻尾はふさふさした円柱形をしており、尻尾だけ見るとキツネによく似ています。
実際、仕事中のコーギーが家畜を狙って侵入したキツネと見間違われ、射殺されるケースもあったとのこと。
この説によると、コーギーの尻尾を短く切ったのは、野生のキツネと区別がつきやすいようにした結果というわけですね。

家庭犬になった現在もコーギーの断尾は続いている

家庭犬になった現在もコーギーの断尾は続いている

しかし、牧羊犬として働く機会はなくなった現在でも、コーギーの尻尾は短いままです。
というのも、日本やアメリカなどの犬種標準では「コーギーは尻尾が短いものが標準」とされているからです。
犬種標準とは、各犬種の理想的な姿形が示されているものであり、ドッグショーの評価基準などに利用されています。
例えばJKC(ジャパンケネルクラブ)では「コーギーの尻尾は断尾または5.1cmまで」と定められており、外れた犬は規定外になります。
長年の断尾の歴史から、コーギーは尻尾が短い犬種として犬種標準に登録されたため、今もなお断尾が続いているのです。

コーギー以外にも断尾される犬種は多く存在する

コーギー以外にも断尾される犬種は多く存在する

実はコーギー以外にも、断尾対象である犬種はたくさんあります。
例外はありますが、主に断尾が行われるのは「牧羊犬」や「狩猟犬」として活躍していた犬種です。
ここでは、体のサイズ別に代表的な断尾犬種をいくつか紹介します。

断尾される小型犬の代表例

  • トイ・プードル
  • ミニチュア・シュナウザー
  • ジャックラッセルテリア
  • ミニチュア・ピンシャー
  • ヨークシャー・テリア など

断尾される中型犬の代表例

  • アメリカン・コッカースパニエル
  • アイリッシュ・テリア
  • ミディアム・プードル など

断尾される大型犬の代表例

  • スタンダード・プードル
  • ドーベルマン
  • エアデール・テリア
  • オールド・イングリッシュ・シープドッグ
  • ポインター など

特にテリア系とスパニエル系は、ほとんどの犬種が断尾対象です。
プードルも、サイズを問わず断尾されることが多いでしょう。

犬の断尾の目的は「審美」と「医療」の2つがある

犬の断尾の目的は「審美」と「医療」の2つがある

犬の断尾を行う目的は、大きく「審美」と「医療」どちらかに分けられます。
審美の場合、市場価値を高めるため犬種標準に沿った見た目を作るというのが、大きな目的です。
犬種標準から外れた犬は価値が低いとみなされ、安い値段で取引されるため、断尾対象の犬は子犬のうちに尻尾を切られます。
ペットショップやブリーダーのもとでよく耳にする血統書は「この犬は犬種標準を満たす」という証明でもあります。

たいして医療目的の断尾は、怪我や感染症、汚染予防の観点で行われます。
コーギーのように尻尾を家畜に踏まれて怪我をしたり、尻尾についた糞便で汚染や感染が起こったりしないように、というものですね。
猟犬の場合は、「茂みに入ったときに尻尾を左右に振ったことで尻尾が傷つく」などを防ぐ目的もあったといわれています。
現在の断尾はそのほとんどが審美目的によるものですが、犬を狩りに利用していた時代は、医療目的がほとんどでした。

犬の断尾の歴史は数世紀前のヨーロッパから始まった

犬の断尾の歴史は数世紀前のヨーロッパから始まった

犬の断尾が始まったのは、数世紀前のヨーロッパとされています。
当時、狂犬病が流行していたヨーロッパでは「断尾をすると狂犬病が予防できる」と信じられていました。
咬まれやすい長い尻尾を切断することは、狂犬病を避けるおまじないのような意味があったのかもしれません。

また、尻尾を切ると背中の筋力が強まって足が速くなる・瞬発力が高まるという説もあったのだとか。
反対に、尻尾を切ると足が遅くなるため、貴族の狩猟用のシカを誤って狩らずに済むなど、驚きの理由もあったといわれています。
今では信じられないようなこれらの理由ですが、当時のヨーロッパでは、ごく当たり前のように行われていたのです。

なお、1700年代ごろのイギリスでは、節税目的で断尾が行われたこともあります。
当時は尻尾のついた犬が課税対象であったため、断尾をすれば納税が不要になったのです。

近年は断尾の在り方を見直す動きが広がっている

近年は断尾の在り方を見直す動きが広がっている

家庭犬として飼われることが多くなった現代では、断尾への意義を問う声も増えています。
イギリスをはじめ、オーストラリアやオランダ、スイス、スウェーデン、ドイツなどでは、断尾の廃絶が進みつつあります。
古い慣習や人間の都合によって断尾を行うというのは、動物福祉・道徳的観点からみても、決して良いとはいえません
さまざまな歴史的背景から生まれた断尾ですが、このような慣習は少しずつなくなっていくといえるでしょう。

著者・専門家プロフィール

この記事を読んだ人におすすめ